帰宅してから、買い置いてあったDVDで、「フレンチ・コネクション」を見る。1971年の、アカデミー作品賞、監督賞、主演男優賞他2賞を獲得した、刑事映画の古典的名作。しかし、今まで一度も見たことなかった。 「ポパイ」と呼ばれるNY市警の麻薬捜査刑事を演じるジーン・ハックマンは、この頃はまだ若い。なんだかちょっとラッセル・クロウに似ている。ま、というよりも、ラッセル・クロウが、ちょっと若い時のジーン・ハックマンに似てると言うべきか。 ハックマンも、頭が薄くなってからは、南部育ちで、マッチョ、バリバリの人種差別主義者という、いかにもアメリカ人のひとつの典型のような役柄がピッタリになってしまったが、この映画の頃は、なかなかかっこいいのであった。 もっとも、オッサンになってからのハックマンも、なかなか味があって、「ミシシッピ・バーニング」の刑事役なんてのは、見てくれピッタリ、しかし、深みも感じさせる役だった。ちょうど、「夜の大捜査線」の田舎警察署長を演じたロッド・スタイガーのように。 ラッセル・クロウは、役者としては、大根の部類であるが、オッサンになって、もっと深みのある役柄ができるだろうか。 映画のほうは、フランス料理店で豪華な食事をしている悪党を、外で震えながら待つハックマンのシーン、地下鉄での容疑者尾行の目まぐるしいサスペンス、殺人犯の乗った高架鉄道を下の道路を車でチェイスするアクションなど、尾行や追跡の撮影に迫真感があり、刑事物の記念碑的作品として実によくできている。映画を通して使われる、低音の弦楽器の響く無気味なリフレインも、実に印象的。 麻薬組織を追い詰めた最後のクライマックスで、ハックマンは、一緒に事件を捜査していたFBN(連邦麻薬捜査局)の捜査官を、誤って撃ち殺す。以前にも、同僚を誤って殺したことがある「ポパイ」が、またしても仲間を撃ち殺す衝撃の過ち。 しかし、ポパイは、「The son of a bitch is here. I saw him. I gonna get him.(あのクソ野郎は、まだここにいる。見たんだ。必ず捕まえる」と、銃の弾丸を詰め替えて倉庫の奥にさらに分け入って行く。まさに狂人のごとく、麻薬捜査に「取り憑かれた」刑事の虚無。そして、今度は誰を撃ったのか、最後に響き渡る銃声。 やや後味の悪い、しかし、だからこそ凄みのある結末だが、この映画は、実際に「フレンチ・コネクション」と呼ばれた事件を下敷きにしている。実際の事件では、主犯と見られる大物は最後まで逃げ切り、逮捕されたのは小物のみ。現実の犯罪捜査の結末のほうも後味悪く終わっているのであった。 |