帰宅途上に、今週号の「週刊文春」を読んでいると、『「ロード・オブ・ザ・リング」の字幕に抗議殺到』という記事が目にとまった。字幕を担当した戸田奈津子の訳に対する批判が、原作愛読者に多いのだとか。しかし、実際に例を読んでみると、ま、どっちでもエエがなという程度の差しかない。 GW前に仕込んだ三文記事というヤツか。あるいは、文春の記者そのものが、あんまり英語に堪能ではなく、適切な例をあげることができなかったのかもしれない。 戸田訳では、あの「指輪自身に意思がある」という急所が伝わらない。という批判もあるらしい。しかし、普通に映画を見ていて、あの指輪自身の意思に周りが操られていることはハッキリ分かった。ケイト・ブランシェット扮するエルフの女王が、指輪を前にして正気を失いそうになり、ようやく我に帰って、「I pass the test」とか言うところだってそうである。 ただ、ひとつだけ、文春の記事に同意する点がある。 仲間だと思ってたボロミアが、指輪の魔力にとりつかれてフロドに襲いかかった後。次に会ったアラゴルンをもフロドは疑念の目で見て拒絶する。この場面で、アラゴルンが "I would have gone with you"(できうれば、ずっと一緒に行きたかったが)としゃべっていたというのは記憶になかった。 このセリフを、戸田は、「できれば君と、運命をともに」と訳しているのだという。だとすれば、やはりミスリーディングだ。 間違いだとは言わないが、「〜したかったが、できない」という仮定法のカンどころを、キチンと訳していない。この場面で、すでにアラゴルンは、フロドが自分を拒絶したことを知り、これ以上同行することを諦めているのである。これは、確かに映画を見ていて気づかなかったなあ。最後に、フロドと別々の道を行くことになる場面が、やけにアッサリしてると思ったが、こういう心理の動きは、まったく追えていなかった。やっぱり外国の映画見るのは、なかなか難しいもんである。 |