のんびりグータラした週末。DVDで以前に購入してた「未知との遭遇」を見る。劇場で見たのは、もうとんでもなく昔だ。スピルバーグが、まだ今ほど商魂たくましくなかった頃。 映画の冒頭、1945年に行方不明になった海軍航空機部隊がメキシコの砂漠で見つかる。「昨日の夜、太陽が出て、歌った」とスペイン語で話す老人。奇怪な光りに遭遇し、管制官から、UFOとの遭遇を報告するかと聞かれて、「いや、辞めておく」と答えるパイロット。導入部は、サスペンスに満ちて素晴らしい。 特典映像の「削除されたシーン」を見ると、リチャード・ドレイファス扮する主人公が、電力会社のエンジニアとして謎の停電(実はUFOのせい)の原因を追うシーンの数々が削除されている。完成作で、主人公が遭遇したUFOに「とりつかれ」、会社をクビになる経緯がちょっと唐突な気がするのはこのせいだ。もっとも、さすがに昔の作品で、全体のストーリー運びはややスローであるから、これはこれで削除して正解だったのだろう。 空軍調査部が、シカゴ・オヘア空港に着陸した旅客機に乗り込み、下降時にUFOに接近遭遇した乗客から、すべてのカメラ、テープレコーダを回収するシーンなどは、残しておいたほうがよりリアルになった気もするが。後のMIBなんかを思い出すシーンでもある。 リチャード・ドレイファスがマザーシップに乗りこんでからの内部の映像は、一度「特別編」として公開されたことがある。しかし、今回のDVDではカットされており、「削除されたシーン」のほうに入っている。幻想的なシーンだが、カットしたほうが作品のエンディングとしては、落ち着きとイマジネーションの広がりがあってよい。すべてを映像で説明しつくす必要などないのだから。 マザーシップから異星人が大勢現れるラストでは、撮影上の混乱から、いろんなショットが混在したままになっている。今見ても、ちょっとまとまりがないが、しかし、それでもなお、この映画のメッセージはきちんと伝わる。この宇宙には、地球以外にも知的生命がいるに違いないという夢。 後年のスピルバーグが繰り返し使う映像的モチーフは、ほとんどこの映画にすでに現れている。スピルバーグは、アカデミー作品賞を受けた「シンドラーのリスト」より、ごく初期のこの作品で記憶されるべきだというのが感想。実に懐かしい映画だ。 |