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2002/09/23 「サイン」を観た。

銀座で「サイン」を観た。まだ公開したばかりだが、客足はそれほどでもない。映画のオープン・クレジットは、時代がかった大げさな音楽に古風なフォント。いわゆる昔のヒッチコックを模してるのかもしれない。高台から庭を見下ろした俯瞰のショット。画像が奇妙にゆらぐ。一瞬、おや、と思うと、引いて行くカメラに窓枠が映り、窓ガラスの厚さ不揃いによる歪みであったことが分かる。なかなか面白いショットだ。

妻の事故死から神への信仰を捨て、農夫になった元牧師を演じるのは、メル・ギブソン。この一家のトウモロコシ畑に突然現れた、クロップ・サークル(ミステリー・サークル)。そして、次々に襲ってくる怪異現象。奇妙な体験を共有するという意味では、この映画は、観る人を最後までグイグイと引っ張ることには成功している。音響も、なかなか素晴らしく、犬の吼えるところなんてビックリした。しかし、映画全体として成功しているかというと、どうも疑問だ。

超自然や超能力を次々と扱ってきたM・ナイト・シャマラン監督の、今度の映画はクロップ・サークル。いったいどういう展開になるのかと、大変に興味深かったのだが、ま、ちょっと、これがねえ。

M・ナイト・シャマランは、「シックスセンス」で衝撃のデビューを飾り、次作「アンブレイカブル」では、(万人を納得させられなかったとはいえ)一応、「一発屋」では無かったという評判を勝ち得た。しかし、この映画を見ると、やはり「シックスセンス」は、単なるビギナーズ・ラックであったのかと心配になってくる。

シャマランは、「ドンデン返し」だけの監督と言われるのが、よほどイヤだったのだろうか。どうやって締めくくるのか怪しんでいるうちに、この映画は、実に何のヒネリもなく終わってしまう。そういう面では、この映画も、「見事に観客の予想を裏切る」。まさかこのまま終わらないだろう、と思っていたら、なんとそのまま終わってしまうという、逆な意味での衝撃。

ミステリー・サークルを作ってたのは宇宙人(当たり前すぎるぞ)。メル・ギブソンの家を襲撃に来る(他の大都会にもたくさんUFOが出現してるのに、なんでこんな田舎の一軒家にまで)。しかし、扉に板が打ちつけてあって中に入れない(攻めてきたにしては、なんか弱い宇宙人だ)。最後は息子をさらおうとするが、バットで殴られて、水がかかって死んでしまいました(わざわざ宇宙から、バットで殴られにきたのかよ、おいおい)。事件は一件落着。メル・ギブソンは、神への信仰を取り戻しました(絶句)。

しかし、こんな安直な脚本で大金を貰ってるとは、ちょっと信じられない気がするのだが。

そうそう、シャマランは、自分の映画にチョイ役で出演するのが好きなのだが、今回の出演シーンは、監督があそこまで画面に出たら興ざめだというラインを超えている。俳優でもないんだから、ちょっとはしゃぎ過ぎだと思うなあ。

ビッグスターと子役を使うのも、シャマラン監督の常道だが、別に、とりたててメル・ギブソンを使う必要もなかった。しかし、メル・ギブソンが出てないとなると、まったく何の見所もない映画ということになってしまうだろう。そういう面では大スターを莫大なギャラで使う意味があったのか。シャマランも、大成功して、かなり商業主義に走ってきた気がするな。子役2名は、芸達者でなかなかの好演。

しかし、不思議なのは、この映画のアメリカでの興行成績が、意外によいらしいこと。まあ、しかし、エンディングに至るまで積み重ねられるそれぞれのシークェンスは、なかなか緊迫感があり、撮影も優れている。結末もハッピーエンドであって、まあ、そういうところが単純に受け入れられただけなのかもしれないが。