昨日は午後から日比谷で「レッド・ドラゴン」を見た。トマス・ハリスの原作は、ずいぶん前に読んだことがある。多分、映画で「羊たちの沈黙」がリリースされた後で、その後で開催された国立西洋美術館のウィリアム・ブレイク展に行った記憶もある。あれはいつ頃だったか。 映画は原作に忠実に作られている。結末が思い出せないくらいに適度に原作を忘れてたので、なかなか楽しめた。映画見ながら、「ああ、こういう場面あったあった」とだんだん思い出してくる。ははは。 ハンニバル・レクター博士は、それほど大活躍するわけではないが、これは原作がそうなってるから仕方ない。口に奇形を持った犯人は、厳格で圧制的でほとんど狂人であった祖母に幼いころから虐待を繰り返されて育った。彼は、いつしか自分の心の中に、その「狂った祖母」を飼うようになる。例えば、殺人の時に犯人がつける義歯も祖母の遺品だ。原作を読むとその異常さが分かるのだが、映画だけ見た人は、犯人の心理描写まで得心がいっただろうか。 生まれて初めて自分を愛してくれた盲人の女性を、犯人が自らの内なる「狂った祖母」に逆らっても救おうとする。これは、一種の悲恋物語でもある。しかし、そういう面では、犯人の容貌はちょっと普通すぎた。見るからに嫌悪感を抱くような容貌に設定したほうが、盲目の女性との恋がもっと生きたかもしれない。しかし、レクター博士の独房は、なかなか懐かしい。第2作の始まりへとつながるシーンで終わる趣向も、ありがちだが効果的。なかなかよく出来た映画であった。 |