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2003/06/02 「マルコヴィッチの穴」 

日曜は部屋でグータラ。DVDで「マルコヴィッチの穴」を見る。原題、「BEING JOHN MALKOVICH」を「マルコヴィッチの穴」と訳したのは、あまりにも直裁だが、なかなか力強く印象的な邦題になった。

内容的には、実に奇妙な雰囲気を持ったSFスラップ・スティックと言おうか。狂言回しで出てくるパペットが迫真で凄い。性同一性障害や、ジョン・マルコヴィッチを経由しての3角関係など、なかなかひねりが効いている。映画のあちこちで交錯するpuppet(あやつり人形)とpuppeteer(人形使い)の暗喩は、肉体と精神の関係にも似て、映画全体にシニカルなトーンを与え、印象深いものにしている。

自分につながる穴に入る本人、マルコヴィッチの幼少期のトラウマ、奇妙な7 1/2階、他人の肉体から肉体へ乗り換えて永遠に生きる存在。それぞれのエピソードは興味深いのだが、あまりにも色んな要素を入れすぎて、かえってゴチャゴチャした印象は否めない。最後にまとまりをつけるのを放り出したような部分もある。監督のスパイク・ジョーンズはミュージック・ビデオやCM製作出身だというが、初めての長編映画とあってはやはりそんなもんだろうか。

まあ、しかし、ジョン・マルコヴィッチという俳優の存在感で半分以上持っている映画。決して名作ではないが、人をひきつけるアイデアがひとつあれば1本映画が作れるという見本のような映画でもある。



今月号のサライは銀座特集。表紙に載った寿司は、一目見ただけで「新富寿司」だと分かる。色濃く煮あげたアナゴ、ヤリイカの印籠詰め、細かく飾り包丁を入れたカスゴ、カンピョウの海苔巻きも独特の色だ。以前、入り口近くのツケ場に立っていたジイサマの職人は、無愛想に見えて、昔の寿司種のことなんぞ聞くと相好を崩して色々と教えてくれたもんだが、引退したと聞いたのも、もう去年の話になってしまった。コハダの新子やスミイカの新子が出る頃にまた訪問するか。