エミネム主演「8 Mile」をDVDで見た。ラップの事はサッパリ分からない。エミネムだって、SkyPerfecTVのMTVなんとかアワードで何度か見た程度。しかし、何かの映画館でこの「8 Mile」の予告編が妙に印象に残った。白人のラッパーという珍しいキャラクターと、エッジの立った鋭い歌声。 人種によって声の質がちょっと違う気がする。ギターで言うと、ギブソンとフェンダーの音が違うように。エミネムの曲を聴くと、ああ、これは確実に黒人の声ではないと分かる。いや、別にそれがよいと言ってるのでも悪いと言ってるのでもない。ただ歌声で人種が分かる気がするのである。ということで、昨日、「しみづ」の帰りにキムラヤでDVDを見かけて衝動買い。 本人のサクセス・ストーリーを題材にした半自伝的映画ということらしいが、デトロイト郊外、トレーラーハウスに住む、いわゆるpoor whiteの生活というものがなかなか印象的に描かれている。キム・ベイジンガーがエミネムの母親役なのだが、無教養で自堕落なホワイト・トラッシュ役に妙なリアリティがある。昔はもうちょっといい役もやってたがなあ。映画の題名は、黒人達が住むデトロイト・ダウンタウンとスプロール化で白人達が逃げ出した郊外のちょうど境界線にある「8 Mile Road」から取られている。 ヒップホップ・クラブでの「ラップ・バトル」が圧巻。1対1の対決で、リズムに合わせて相手のことをボロカスにこき下ろして行く。観客の歓声で勝敗が決まる。単なる悪口雑言だけでは飽きられる。しかし強烈な毒がないと聴衆を味方につけることはできない。リズムに合わせて機関銃の弾丸のように撒き散らされる言葉。聴衆をヒートアップさせて行く勝負は、まさに言葉の格闘技だ。 スタッズ・ターケルの本だったか、黒人の子供は作文は苦手だが、しゃべらせると誰でも実に生き生きと身の回りにあったことを描写できる、と語った小学校教師の話があった。「ラップ・バトル」を見ていると、ラップというのも、彼らの文化に深く根ざしたところに発祥があるのではという気がしてくる。そこで白人のエミネムが優勝するというのも、できすぎたお決まりの結末であるが、割と勢いで見せてしまう説得力あり。人気者が出ると主人公にしてどんな映画でも作るのは手馴れたハリウッドの職人芸。それなりに楽しめる。 そういえば、日本でもラップやらヒップホップと称してる人達もいるわけであるが、なんだか、ズボンずらして、頭悪そ〜に歌ったらそれで本場風として事足れりとしているような気もする訳である。本物と何かが確実に違う。まあ、日本語には、ああいう風にリズムに乗せてマシンガンのように「語る」文化がないからか。 |