金曜にTVで、「Shall we ダンス?」を見たのだが、書こうと思って感想を書き忘れていた。邦画の場合吹き替えの問題がないのでTVで見ても十分楽しめる。 周防正行監督のこの映画は、昔、レンタルビデオで一度見ただけだったのだが、再見しても実によくできている。私は日本映画が嫌いだが、この作品には悪しき日本映画の香りがしない。悪しき日本映画というのは、昔々の全盛期に、たまたま日本の映画会社に入った人間が、監督も技術スタッフも脚本家も、才能もないのに何の競争にも曝されず、日本的徒弟制度に乗っかったまま年取ってもずっと居座って威張ってるだけで、結果的にはロクな作品を生み出していない世界だった。「だった」と過去形で語るのは、もう終っていると思うからだが。 しかし、この監督はずいぶんアメリカ映画を研究したという気がする。よくできたコメディ/ドラマ。主人公の日常からの脱却と成長を描くストーリーも印象的。人物像も(コメディであるから深みないとはいえ)よく練られ、印象的なエピソードで表現されている。大学相撲の世界を描いた前作とほとんど同じキャストで映画を作って違和感がないのは、脚本の人物描写がしっかりしているからだ。登場人物のセリフも印象的。ヨーロッパ映画のような、難解、あるいは不可解、または芸術的な深みといったものはない。それこそが、誰にでも分かり、普遍的に人の心をつかむハリウッド的というか。アメリカでリメイクが作られるのも分かる。 主役の役所広司も好演。ヒロイン、草刈民代の演技は、セリフも棒読み演技も生硬。目くじら立ててみると、実はかなりの大根である。しかしそれを隠すのが監督の演出と編集の才能。バレーにはプロでも演技にはシロウトの草刈の、画になる素晴らしいところを余すところなくキチンと引き出し、女神のごとく本当に綺麗に描いている。さすがに映画の公開後に結婚しただけあるというか。そう、この映画は、周防正行監督が自分の草刈民代への愛をスクリーンに焼き付けた、実に私的な映画でもあったのだ。 |