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2004/05/01 「ソイレント・グリーン」 インド化したNY

Amazonで購入したDVD、「ソイレント・グリーン(Soylent Green)」を見た。原作はハリイ・ハリソンのSF「人間がいっぱい(Make Room! Make Room!)」。ずいぶん前に読んだが、いわゆるアンチ・ユートピア物の名作。もうすでに本屋では見ないから絶版になってるのか。

舞台は2022年、人口が4000万人に達したニューヨーク。タイトルバック、古い写真を次々と映し出すモンタージュが印象的。牧歌的手工業から近代工業へと続く産業化の歴史と資源の放逸な浪費、人口爆発と資源の枯渇、環境汚染と現代文明の停滞、いずれ世界は崩壊するという不吉な予感を短い時間で余すところなく見せている。

大富豪が殺された事件の捜査をする刑事がチャールトン・ヘストン。気候激変によって灼熱と化したNY。水道や電気のユティリティが完備しているのは、スーパーリッチが住む超高級コンドミニアムだけ。庶民には食料も配給。動物も植物もほぼ絶滅し、配給の食糧はプランクトンから合成されたソイレント・グリーンというクッキー状の工場生産食料。

富豪のアパートメントに捜査に行き、恍惚としてエアコンの風に当たり、氷の入ったグラスやシャワーに歓喜するチャールトン・ヘストンが実にリアル。彼の所属するのは路上で無数のホームレスが暮らすドブのような世界。富豪のコンドミニアムには「家具」と呼ばれる「女」までついている。徹底した貧富の差。そう、「ブレードランナー」が「香港化」した未来社会の話なら、この映画で描かれるのは、「インド化」した未来のNYだ。

温室で生き残る地球最後の樹、おそろしい高値で取引されるわずかな量の野菜や肉。地球はもう死にかけている。人生に絶望した人間を安楽死させる施設が「ホーム」と呼ばれるのが皮肉。そして暴かれる人造食料「ソイレント・グリーン」を巡る陰謀と秘密。

細かいシチュエーションはかなり原作小説を忠実に描いている。咲き誇る花やせせらぎ、雄大な山脈と大洋。すでに失われた地球の美しき姿がエンドロールに続くのだが、これまた印象的。物語の結末にあまり救いがないのだが、このエンドロールが逆に一種の救いとなっている。チャールトン・ヘストンは、上手い役者ではないものの、こういう役には実にはまる。まあ、いくらなんでも2022年までにこの地球にこんな地獄が現出するとは思えないが、現在の物質文明が永遠に続くわけもないだろう。ずいぶん昔の映画だが、今見てもなお訴える力のあるSFの名作だ。