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2004/10/02 「アイ,ロボット」

昨日の午後は有楽町に出て、「アイ,ロボット」を観た。ウィル・スミスの出るSF物というと、どうも見掛け倒しで大した事ないのでは、という妙な先入観があったが、映画としては実に面白くできていた。未来のシカゴのショットも壮大で全編を通したCGも見事な出来。

ウィル・スミス扮するロボット嫌いの刑事スプーナーがバッグを持って街中を走るロボットを追いかける冒頭のシーン。昔読んだスタッズ・ターケルのインタビュー集に出ていたシカゴ育ちの黒人が語る人種差別の話を思い出した。
「白人なら街中を走っても平気さ。でもオレ達がシカゴの街中を走ると必ず警官に呼びとめられる。だから急いでいても走ったりしないんだ」
というのである。黒人刑事がロボットを追う。見ようによっては皮肉な設定のこのシーンには、ロボットをも含めた未来の新しい「人権」問題が諧謔的に投影されている。

しかし、映画そのものは小難しい理屈とは無縁。スリルとサスペンスあふれる展開が観客を飽きさせない。アシモフの有名な「われはロボット」関連の一連作品は原作ではなく、そこからインスパイアされた脚本ということらしいが、ストーリーがなかなかよく練られている。ロボット3原則のコンフリクトというのはSFでは古典的テーマ。この映画にも、人間を守ろうとするロボットと人間を襲うロボットなど、随所の演出にその設定が生かされており、これも実に面白い。ウィル・スミスの抱くトラウマも効果的にストーリーに組込まれている。

ただし、ウィル・スミスは存在感あるものの演技は大根。CGで作られたロボット、サニーのほうが名演というのも情けない気がするが、人間の域に達して感情を持ったロボットが主人公であるから、ま、それはそれでよいのかも。ロボット研究者役の女性はなかなか魅力的。

事件解決のどんでん返しもなかなかよかった。CGによるロボットのめまぐるしい乱舞アクションが終結した後に描かれる、感情のあるロボットと人間の友情。そして、「ロボット3原則」の足枷から自由になったサニーが、ロボット達のある意味「救世主」となることを暗示する神話的ラストもなかなか印象的だった。ムヤミな期待をせずに観ると実に面白い作品。