MADE IN JAPAN! 過去ログ

MIJ Archivesへ戻る。
MADE IN JAPAN MAINに戻る

2004/11/01 「シークレット・ウインドウ」

日曜午後は日比谷でジョニー・ディップ主演の「シークレット・ウインドウ」。予告編は何度か劇場で見た。不気味な男が玄関に現れ、「You've stolen my story」と呟くのだ。記憶のどこかに引っかかるものがあったのだが、劇場のポスターで原作がスティーブン・キングと判明して思い出した。確か原作を読んだ記憶がある。<そんなことくらい事前に調べてから行けっての。

夫婦生活が破綻した作家は、家を妻に明け渡し、郊外のセカンドハウスで自堕落な生活を過ごす。この作家の前に突然不気味な男が現れ、「お前は俺の小説を盗作した」と脅迫する。この男の登場とともに次々起こる不気味な事件。そしてついに殺人まで。

キングの小説ではおなじみの登場人物、心にトラウマを持ち神経質そうな作家役を、ジョニー・デップは実に印象的に演じている。時折、過剰とも思える細かい演技があれこれあるのだが、本人の演技プランなのか監督の演出なのか。おそらく前者だろう。原作は読んでたのだが、結末はすっかり忘れてたので映画を見るのに支障なし。分類としてはサイコ・スリラーの範疇。

こういう系統の作品では、結末が開始30分で分かった、いやオレは10分で分かった、いやオレなんか見る前に分かった、などというどうでもよい不毛な自慢がネット批評ではありがちだが、興味をそがずに後半まで観客を連れて行くことにはある程度成功している。

独特のキャメラワークが面白い。古典的なホラーのショットとかなり違うことをやっている。映画の冒頭、俯瞰から降りてきたキャメラが鏡の中に入って行くように見える撮影も効果的。階段を見下ろすショットは「サイコ」を思い出した。

しかし結末は間延びしてあんまり感心しない。小説のほうもそうだったかと帰宅して本棚から原作を探す。「ランゴリアーズ」という文庫本に収録されていた。

原作小説のラストは、いわゆる火曜サスペンス劇場のようなお約束の結末と謎解き。しかし、その後に付け加えられた短い後日談があり、ここにスーパー・ナチュラルな風味がするのがいかにもスティーブン・キング的。というよりこの後日談部分が無ければキングの作品に思えない。

で、映画のほうは、この後日談部分をスッパリ切り捨ててしまい、火曜サスペンス劇場的結末も拒否した。ではそれが成功だったかと問われるなら、やはり失敗であったという感想。この映画の主人公は小説の結末に病的にこだわり、「この結末しかない」と最後の場面で語るのだが、肝心の映画の結末が原作よりも効果を上げてないというのは、なんとなく皮肉な話でもある。ジョニー・デップだけが記憶に残る映画。