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2005/01/08 「大病人」DVD

「伊丹十三DVDコレクション ガンバルみんなBOX 」から「大病人」を見た。勝手気まま、自堕落に生きてきた俳優兼映画監督(三国連太郎)が病に倒れる。病名は胃ガン。告知はされず手術が行われるが1年後に再発。すでに余命いくばくもない主人公が、告知されない病気に疑いを持ち、荒れ、悩み、医者(津川雅彦)と対立する。しかし最後は病名の告知を受け、自らの死に直面し自分の最後の行き方と死に方を自分で掴み取り平穏に死んで行くというドラマ。

伊丹十三の監督デビューから9年後の作品でありすでに手馴れた調子の手堅いドラマ作り。臨死体験と幽体離脱シーンなども盛りこまれており、なかなか飽きさせない。最初から告知を考えない医者、モルヒネ・カクテルによる痛み止めなどのターミナル・ケアがまだ珍しく描かれているなど、内容的にはやや古くなった点もあるだろうか。幽体離脱シーンの特殊撮影も当時の日本映画としては最先端だったろうが、CGが進んだ現在に見直すとやはりアラが目立つ。

もっとも「死」にどう向き合うかというテーマは人類永遠の課題であってちっとも古くなってはいない。私自身も病気でもしも死ぬなら、苦しみを増すだけの無駄な延命治療は止めてもらいたい。耐えきれない痛みだけは止めてもらって静かに死の準備ができたらと頭では考える。しかし、治る可能性が本当に無いのか、どこまでが無駄な治療か、苦しみと引き換えに治癒のチャンスが少しでもあるのならどこまで耐えるべきか。病気と治療の現実は、そう簡単に決断できるようなものではないだろう。そしてその先に、まだ、死をどう向かえるかという人間極限の問題が待ち構えている。死を考える時には信仰を持つ人がある意味うらやましい。