「伊丹十三DVDコレクション ガンバルみんなBOX 」から、「静かな生活」を見る。 ある作家の家に生まれた脳に障害を持つ長男「イーヨー」とその妹「マーちゃん」の生活を描いた作品。大江健三郎の同名小説が原作だが、同人のノーベル賞受賞と時期的に重なりかなりの話題を読んだ映画。実生活でも伊丹十三監督の妹が大江の妻であり、両家は親戚にあたるのだが、この小説には、映画同様、実際に障害を持つ大江の長男、大江光と大江一家の生活が投影されている。 大江には同じく「イーヨー」を主人公にした「新しい人よ目覚めよ」という小説もあるが、こちらも読んだことがある。映画では、原作同様、知的障害があるが音に敏感で作曲に才能を示す主人公「イーヨー」との一家の生活が、「なんでもない人」との「普通の」、「静かな生活」として描かれる。ここには逆に、障害を持つ子供との暮らしに対して示される、「普通ではない子供がいて大変でしょう」というステレオタイプなおざなりの同情への大江の反発とそこからの超克が示されているような気がして、なにか痛ましい。いや、そう思うことさえ、そういう境遇にない者の、傲慢でやはりステレオタイプな思いこみというものかもしれないのだが。 イーヨー役の渡部篤郎、マーちゃん役の佐伯日菜子とも好演。淡々としているように見える日常にも潜む幾多のドラマ。静謐な中に幽かに感じられる不協和音に翻弄されながらも、誠実に生き、誠実に他者を理解しようとする登場人物達。とある家族の日常を切り出して、きちんと映画として成立している。 |