「ナショナル・トレジャー」を見た。公開して間がないが、劇場はそれほど混んでいない。そもそも最初にこの映画の宣伝を見たのは、確かタクシーの窓ガラスに貼ってある広告だったか。乗ってるとヒマだから、あれは意外に効果あるかもしれない。 テンプル騎士団とソロモン王の秘宝、そしてフリーメイソンが隠した財宝の謎を追う、という話になれば、「フーコーの振り子」や「ダ・ビンチ・コード」を引き合いに出すまでもなく舞台はヨーロッパに持ってゆくのが常道。しかし、この映画は、「財宝はアメリカにあることにすればいいじゃねえか」というハリウッド的能天気なご都合主義で、強引にアメリカ東海岸を舞台に設定。ま、アメリカ人は細かいことは気にしないのだ。 主人公演じるニコラス・ケイジは、こういうドタバタのアクションをやらすと、サル顔になかなか愛敬あり。謎を解くヒントを見つけたと思ったら、それはまた次の謎へのヒントに過ぎない。氷の中に沈んだアメリカ帆船の発掘、アメリカ独立宣言書(Declaration of Independence)の裏面に隠された暗号。ワシントン、フィラデルフィア、NYとアメリカ建国の史跡を巡る宝探しの冒険は、安易なご都合主義がやや気になるもののスリルとサスペンスに満ち、ストーリーが実にテンポよく進行。この手の映画にしては長い2時間10分もあっという間。全編を通じて気楽に見て楽しいエンターテインメント。後味よいラストシーンといい、深みはないが、ディズニーらしい映画として見事に成功している。 物語の鍵となる、アメリカ独立宣言書は、アメリカの由緒ある文書としては一番古いわけではあるが、1776年だから、200年ちょっと前。歴史的重要性は別として、日本ならどこの寺や美術館に行っても、もっと古い古文書など腐るほどあるのだが、歴史ないアメリカ的にはあれで十分古いのだなと思うと、なんだか微笑ましい。ま、そんなことを威張っても詮無いことではあるのだが。はは。 主人公達が追い続けた財宝についてだが、フリーメイソンの源流古代の石工組合や古代エジプトに遡る財宝というと、まあ、ああいうもんであっても不思議ではない。アメリカ建国宣言に署名した政治家達の多くはフリーメイソンだったなどという説もあるが、植民地から独立したばかりでまだ大国でもなかったアメリカにテンプル騎士団の財宝が来たということのほうが不思議。もっともそんな疑問を持っていては映画が楽しめない。ま、アメリカ人は細かいことは気にしないのだ。 現実のアメリカには、フリーメイソンが持ち込まずとも、近代の大富豪が収集した世界の美術品が山のようにある。メトロポリタン、ボストン、シカゴ。しかし、それでもなお、古代からの収蔵品の底力においては、大英博物館やルーブルに敵わない。帝国主義による収奪の年季がヨーロッパとは格段に違うのであった。 |