「バタフライ・エフェクト」を見た。いわゆる、タイム・パラドックス系のSFスリラー。しかし、実によくできている。ところどころ欠落した少年時代の記憶を持つ主人公。いわゆるトラウマが残る自らの記憶の欠落前後を記録した自分の日記、それを読み返すうちに主人公は、自分がその欠落した人生のスポットに立ち戻り、自らの行動を変え、人生をやりなおし、そして他者の人生を変えうることに気づく。 「バタフライ・エフェクト」とは、いわゆる「カオス理論」で、「ある蝶のはばたきが地球の裏で暴風雨の原因になる」、すなわち「初期条件のごく僅かな差が、めぐりめぐって予見不能な大きな相違を生む」という例えなのだそうである。 自分の幼少期の記憶の欠落に秘められた謎を追ったがゆえにまねいた初恋の幼馴染の死。特定の過去に戻り物事を変える能力が自分にあることに気づいた主人公は、自分の「日記」を読み、その特定の記憶欠落点に戻り、過去を改変して全てを救おうする。しかし、何かを変える都度起こる予見不能な出来事が、主人公とその周りの運命を翻弄し、すべてがおかしくなってゆく。それが、バタフライ・エフェクト。 幼少期のチャイルド・アビューズ、大学キャンパス、フラタニティへの入会儀式、刑務所での地獄など、映画は場面と時代をめまぐるしく変え、様々な人々の変幻する運命を乗せて、エモーショナルなローラーコースターのように疾走する。フラッシュバックされる、いくつもの過去、そして一度はそうあり得たかもしれない未来。そしてまた改変される過去。時折はさまれるショキングなショットも印象的。 タイム・パラドックス物としてはそれほどびっくりする仕掛けなく標準的な筋立て。しかしラスト・シーンは、実に印象的な悲恋として成立している。キスさえもせず、会ったとたんに別れた生涯の恋人。もっとも、映画全編を通じて感情面の演出はかなり淡白。最後など、もう少し引っ張って「泣かせ」てもよかったという気がするが、しかし、それはそれでこの映画の個性だろう。 実によくできた映画だが、公開情報など見ると、あんまり大きな扱いではない。銀座東劇でも、来週末には他の映画がかかるらしい。あんまり人気ないのがもったいないな。DVD出たら購入するか。 映画を見てからYahoo!で予告編をチェックするに、「ここを使っていいのか」というシーンをあっけなく使ってる割に、予告編としてのインパクトは薄い。以前、劇場で見たことあるかねえ。記憶にない。本編にも、切り出すともっとショッキングで予告編に好適なショットが数々あった気が。最初からPG12指定でもあり、恋愛映画のような予告ではなく、もう少しインパクトある宣伝したほうがよかった気もするがなあ。 |