さすがに押し迫ってきて、なんだかんだで更新の間が空いた。先週末、有楽町に出て「キング・コング」を見たので、書き忘れていたその感想を。 「ロード・オブ・ザ・リング」のアカデミー監督、ピーター・ジャクソンが、子供の頃に見て衝撃を受け、映画監督を志すきっかけになったのが、1933年製作のオリジナル「キング・コング」。一番好きだと語るこの映画を、ジャクソン監督がCGを多用してリメイクした作品。本人の思い入れがよく分かる力作に仕上がっている。 全編に渡りCGは迫力あり。キング・コングが表情を含め実にリアルにできているのはもちろん、スカル・アイランドでの恐竜暴走、コングとティラノサウルスとの戦い、人間に襲い掛かる巨大昆虫など圧巻。一番息を呑む仕上がりになっているのは映画のラスト、コングが摩天楼に登る有名なシーン。遥かな高みからニューヨークを見下ろす、眩暈がするような素晴らしい俯瞰ショット。高所恐怖症の人ならずとも、身がすくむリアルで美しい映像。 全編にわたって見ごたえはあるのだが、それにしても186分というのはチト長い。いざ気になりだすと、ピーター・ジャクソンの物語運びは、ノッタラノッタラとスローなところあり。開始から1時間近く経っても、まだコングが出現せず、島に向かう船上で映画を撮ってるってのもなあ。そういえば、「王の帰還」でも、スタートから2時間半以上経ち、指輪を捨てる寸前まで来たフロドが蜘蛛にグルグル巻きにされ、おもわず頭がクラクラしたことがあったな。「指輪」は原作自体が超大作であるからして3時間超でも納得行くが、キング・コングだけで3時間は引っ張りすぎという感もあり。 俳優では、エイドリアン・ブロディが印象的。大画面一杯にアップになると、鼻デカイなあ、変わった顔だなあ、とコングの表情クローズアップよりも見飽きない。 ナオミ・ワッツは地味な印象だが、「マルホランド・ドライブ」同様、売れない女優を演じると実に上手い。小太りで偏執狂的な映画監督デナム役には、ジャクソン監督自身が投影されているものと思われるが、監督の思い入れが激しすぎるのか、ひょっとするとコングと並ぶまるで主役級の扱い。このへんは評価が分かれるところだろう。 ドリスコルとアンの恋、黒人の航海士と悪ガキとの心の交流など、割と余計な周辺ドラマを描きこんでいるのも映画が長尺になった原因。ただ残念ながら、人間ドラマとして深みがあるとは言い難い。人間を襲う巨大昆虫や巨大ヒルは、嬉々として実に丹念に描いているし、鬱蒼としたジャングル場面では、コング周りをプィ〜ンとたくさん飛んでいる羽虫までCGで背景に描きこんでいるなど、オタク的な芸は実に細心の仕上がりなのだが。 もっとも、誰でも知っているファンタジーをリメイクして、3時間に渡り観客を飽きずに最後まで引っ張るというのは、やはり監督の骨太な力量。映画館に足を運んで損の無い映画に仕上がっている。 |