外出するのもおっくうなんで、ぼんやりとSKYPerfecTVのガイドブックを見ていると、折り良く、PPV(ペイ・パー・ビュー)でジュディ・フォスター主演の「コンタクト」が始まるところだった。映画館では見逃していたので、さっそくチャンネルを合わせる。こういう時はPPVは便利だなあ。
タイトル冒頭のSFXがなかなか素晴らしい。大気圏外から見た地球からカメラがどんどん遠ざかって行く。月の軌道をかすめ、火星を通り過ぎて、小惑星帯を通りすぎて外惑星へと。太陽がどんどん小さく遠ざかってゆくのもなかなかリアルだ。引いて行くカメラは外惑星を通り過ぎた後、彗星やチリの残る太陽系を離脱して更に速度を速める。
誕生し始めた恒星群や暗黒星雲を次々にかすめて更には銀河系を離脱。誕生し始めた星雲群や他の銀河を次々と通りすぎて、いよいよ宇宙の深淵のパルサー群に達したところで、すべての銀河や恒星が中心部に向って移動を始める。移動は次第にその速度を増し、すべての宇宙が、まばゆい光の集まる中心の一点にすさまじい速度で収縮して行く。そう、カメラは地球から外宇宙に遠ざかっていたのではなく、ビックバンに始まる数百億年の宇宙の歴史を、わずか数分のうちに遡っていたのだ。
宇宙が一点に収斂していった後の暗黒がさらにパンしてゆくと、それは主人公の子供時代の瞳だった、という冒頭のシーンに繋がってゆくのだが、随所にハッブル宇宙望遠鏡からの写真にそっくりな映像が丹念に挿入されており、リアルで、実に良く出来たコンピュータ・グラフィックスだった。
もしもこういうCGが昔でも使えていたら、スタンリー・キューブリックは、きっと「2001」のラストにも使っていたに違いない。本編のほうも、なかなか軽快なストーリー運びで飽きさせない。大統領のシーンで実写との合成がフォレスト・ガンプにそっくりだなあ、と思っていたら、同じロバート・ゼメキスの監督作品なんだな。
どちらかと言えば、知的できつい感じのするジュディ・フォスターが、スペース・ポッドに乗って、深宇宙へと瞬間移動してゆく時には、果てしない宇宙の謎に心奪われ、飽きることなく望遠鏡で夜空を眺めていたあどけない少女の頃の顔に戻って行くのが印象的だ。
もちろんこれは、ただ「感性」なんてなまやさしいもので演じてるのではない。「感性」が売り物になるのはシロウトだけだ。映画の大スクリーンで人を感動させるのは、伝統の積み重ねから計算され尽くした手法を身につけた、プロだけができる「演技」、そういうものに違いない。