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1998/10/18 「プライベート・ライアン」を見た

日本シリーズでも見るかと思ってたが、最近、某日記で「プライベート・ライアン」の話を読んだのを思い出して、急に思い立って見に行く事にした。映画館近くの駐車場まで車で10分だから、こういう時は便利。本屋に寄ってから近くの中華で夕食を済ませて映画館に。


原題は「Saving private Ryan」(ライアン2等兵の救出)。スピルバーグが監督とは知らなかった。最初のオマハ・ビーチへの米軍上陸の場面は、おそらく、今までのどの戦争映画よりも残虐で凄惨で、眼をおおうばかりのシーンの連続だ。アメリカ公開時には、到底PG13で収まったとは思えない。

筋書きのほうは、第二次世界大戦の欧州戦線に参戦していた、4人の息子のうち3人までの戦死広報が、同じ日に母親に届くとの報告を受けた米軍参謀総長が、最後の末っ子だけはなんとしても助けだして国に返すのだ、と命令した事から、トム・ハンクス扮する大尉がごく少数の部下だけを連れて、あての無い探索に乗り出すと言うもの。筋書きとしては実に面白い。

戦争の悲惨さは、嫌というほど描けているし、戦意高揚の為のプロパガンダと参謀総長の気まぐれで、たった一人の2等兵を探す為に死地に赴かなければならない不条理、それにいらだつ捜索チームのメンバー間の葛藤なども、なかなか興味深い。

しかし、1本の映画として見た場合には、どうも戦闘シーンがあまりにも長すぎて、不必要なまでに残虐な気がする。実際の戦争の悲惨はあんなものではない、と言われればそうかもしれないが、最初の上陸シーンが、あまりにも残虐でインパクトがある為、実際のところ、後半部分の戦闘シーンになるとちょっとうんざり。

スピルバーグは、特撮を離れて真面目な映画を取ると、たいてい駄作だと言うのが私の個人的な評価だが、今回も、人間の腕が飛ぶところや爆発シーンばかり熱心に撮りすぎてるような気がする。

戦闘部分のインパクトに比較すると、人間ドラマのほうは、いまいち深みと盛り上がりに欠けるような印象を持った。トム・ハンクス扮する大尉の軍隊以前の職業なんてのも、謎めいて引っ張る割には、さほど物語にインパクトを与えているような気がしない。そう言えば、うっかり見逃したのかもしれないが、あの手の痙攣は、何の伏線だったんだろうか。

非戦闘員の通訳役の兵隊についても、最後のドイツ兵射殺シーンは、たしかに不条理で衝撃的ではあるが、ただ剥き出しの衝撃として観客の前に放りだされるだけだから、観客のほうがその解釈に苦しむ事になる。いや、これが他の監督なら、その解釈を色々と考える気になるんだけど、監督がスピルバーグだからこそ、そこまで考えて撮ってないんじゃないかな、って気がする。まあ、これは私の偏見です。ははは。

もっとも、最後のシーンでは、人間の愚かさや、誰しもそれを前提にして生きて行かざるをえない現実なんかが交錯して、一応きちんとまとまりはついている。見る価値はあった。トム・ハンクスは、いつも通りの好演。と言うか、スーパー・スターらしく、いつもの事だが、破綻のない善人役に徹している。というより、そういう役以外は断っているのかも。