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1999/04/18 「シン・レッド・ライン」 ネタバレ無し(?)

「シン・レッド・ライン」を見る。98年度のアカデミー最優秀作品賞にもノミネートされて、評論家絶賛と聞いて期待してたが、個人的にはがっかり。まず、あまりにも長過ぎる。いや、長くてもそれに見合ったストーリーやカタルシスがあればそれで納得するが、それが皆無なんだな。

ストーリーは、別にここに書いてもネタバレにはならないだろう。なにしろほとんど無いんだから。(1)ガダルカナルに米軍が上陸して、高地にある日本軍陣地を攻略するのに長い時間と人的被害がでました。(2)とある兵隊の奥さんから、「離婚して」、と手紙が来ました。(3) 上官の突撃の命令を聞かなかった中隊長が解任されました。とたったこれだけ。これだけで3時間近く映画を作るってのも無理があるような気がする。

普通のプロデューサーなら、この3行シノプシスを渡された段階で、「こんなもんが映画になるか、馬鹿者」と怒鳴るところだろうが、それが一応、商業映画になってしまったんだからびっくりだなあ。

テレンス・マリックという監督は、作品を制作するのが20年ぶりで、幻の監督などと呼ばれてたらしいが、ブランクが長過ぎてボケたんじゃないだろうか。

マドンナの元ダンナ、ショーン・ペンも名優らしいが、この映画ではいったい何をやってるのかちっとも分からない。というより、この人は当たる映画になかなか出演しないね。ひょっとしたら、持ち込まれた企画を評価する能力に欠けてるのかもなあ、実は頭悪いとか。<コラコラコラ。

もっとも映像は確かに美しい。時折はさみ込まれる亜熱帯の鳥やら爬虫類やらの意味不明のショットも、「ああ、熱帯雨林だなあ」と思うけど、問題は本筋には全然関係ない事だなあ。

個人的な趣味で言うと、映画の手法として、ナレーションを多用するのは恥ずかしいと思う。人物の心理や伏線は映像でやってこそ映画って感じがするのだが、この映画は、登場人物のモノローグが全編にわたって嫌というほど流れる。

それも、歯の浮くようなテツガクを、思い入れたっぷりに登場人物がナレーションで画面にかぶせるのだが、これが気恥ずかしい。しかも、ナレーションで語る人物はひとりではなく、場面場面で常に変わる。これも映画の理解を妨げるような気がする。

まあ、監督と脚本が別人物なら、どちらかの責任とも言えようが、この映画は、テレンス・マリックがどちらもこなしているので、これで本人の狙い通り仕上がっているのだろう。どうにも感心しかねるけど。

もっとも、あえて評価するなら、戦争を題材にして、一種の環境ビデオを作ったということもできる。例えば、南の島の浜辺をずっと映したイメージビデオがあるように、ダラダラとストーリー無く、ずっと戦争が写っているという趣向だ。どこから見ても大丈夫。あなたもリラクゼーションのために、居間のビデオでこれを流しっぱなしにしませんか、ってそんな奴は、どこにもいないよなあ。