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1999/09/05 ポストマン

昨日の夜、SkyPerfecTVでケビン・コスナー監督・主演の「ポストマン」をやってたので見た。1997年の製作だが、ニューズウィークではたいへんな駄作と叩かれていたので、劇場公開時には見ていない。

世界戦争が終了し、アメリカ合衆国政府が崩壊した近未来。人々は孤立してあちこちの町で暮らし、弱肉強食をモットーにした武装軍団が好き放題に町を略奪して権勢を誇っている。

流れ者のケビン・コスナーは、この武装軍団に捕われるが、脱走する途中で、配達の時に死亡した合衆国郵便配達人(ポストマン)の制服と配達途中だった手紙を手に入れて、食料を得るために近くの町に行き、自分は再建されつつある合衆国政府の郵便配達人だと適当なウソをつく。

しかし、長らく孤立して武装集団の圧制に苦しんでいた小さな町の住人達は、この知らせに感動し、本人も否応無しに、このポストマンの役を演じつづけなければならなくなる。やがて、若者達が自発的に郵便組織を編成し、武装集団の略奪をも恐れない献身的な努力によって、郵便組織は急速に近隣の町に広がって行く。 とまあそういうお話であった。

最終戦争後の荒廃した世界というのは、マッドマックス2以来、ほとんど定着した類型的な場面設定だが、大都市は破壊されたにせよ、アメリカのハードランドは、やはり郊外の小さな町であり、そういう町がまるで中世のヨーロッパのようにあちこちで孤立して生き残っているという設定は、それなりに真実味があってなかなかよくできている。

ふとしたウソから出た郵便復興のニュースが町の住人を深く感動させて、そこから物語が始まってゆく、というのも荒唐無稽なようだが、近未来の場面設定からすると無理はなく、ストーリーを組み立てるにはよいアイデアだといえる。

武装軍団のベツレヘム将軍を演じる、ウィル・パットンはなかなか手堅い演技で、見ごたえもあるが、戦争前のコピー機セールスマンが私設軍団の将軍にまで上り詰めた、その特異なカリスマと狂気、教養と暴力という、アンビバレントで興味深い内面が十分に描かれているとはいえない。これは本人の演技の責任ではなく、もともとシナリオにそういう場面が少ないのが原因だ。

主役と悪役というのは、いわば同一人物の光と影であって、悪役の内面や狂気を深く掘り下げることによってむしろ主人公が際立つ。ケビン・コスナーは自分のカッコイイ場面を撮るほうに力を入れすぎて、影の部分の描写によって自分を光らせるのを忘れた。そういう気がする。スターが監督・主演した時におちいりやすい陥穽である。だから主人公は、どうも平板に見えるのだなあ。

全体を通して、個々のプロットはなかなか印象的だと思ったが、やはり3時間近いというのは長すぎる。コスナーがポストマンに扮する前までにも時間がかかりすぎ。細かいシーンでケビン・コスナーの息子や娘が出演しているらしいが、そういう余分なシーンも映画を長くした原因のひとつかもしれない。

ま、ケビン・コスナーによる、ケビン・コスナーのための、ケビン・コスナーの映画。それでもまあ、映画史上に残る愚作とまでは思わない。見たらそれなりに楽しめる。 ま、そういう印象だったなあ。