温厚な茹でタコのような親方と、柄本明をイカツクしたような職人がつけ場に立つ。私の担当は柄本明。 冷酒飲みつつおつまみを頼むと、ヒラメの昆布〆、コハダ、カワハギ刺肝ポン酢添え、と出てくる。コハダは小く肉薄なのを軽く〆て、淡い旨みを引き出しており秀逸。ヒラメの昆布〆も、カワハギも(これは身と言うより肝が)素晴らしい。 続いて、この店の看板、アナゴのきじ焼き。アナゴを山椒風味でつけ焼きしたものだが、旨みが凝縮した上品な香ばしさには絶句。この1品だけでも店がやって行けると思うほど。 ここで、柄本明がポンとアワビをツマミで出してきたのは、ひょっとして、前に来た時に頼んだのを覚えてるのか。だとしたら凄い記憶力だが。隣の2人連れもおまかせで切ってもらってるのにそちらには出てないのであった。さらに漬けマグロをツマミで。フレッシュな酸味が醤油に馴染んでこれも秀逸。続いてイカのウニ合え。 ここからおまかせで握りに。コハダは1匹丸づけで、普通のとおぼろを挟んだのと2種類出してきた。カスゴやキスも淡い〆具合がたいへん結構。トロも貝類も、素材が素晴らしい。 ポンポンと握りが出てきた後、最後にもう一度アナゴが2貫。こんどは甘いツメをつけて。これまた香ばしいアナゴがタレと一体になって堪能した。これで勘定が安ければ、最高の店で通い詰めるのだが、そこはやはり銀座。 「しみづ」の普段の勘定の倍以上。コストパフォーマンスは実に悪し。 おまかせにすると、あまり限度を考えずに出すところがあるので、安くあげるには自分であれこれ考えて、注文したほうがよいのかもしれぬ。ま、冷酒3本飲んで1時間半ばかりいたから、単位時間当たりなら次郎よりはずっと安いのであるが。 |