今週末は、新橋が遅い夏休み。どこか新しい寿司屋を開拓するかと、ガイド見てちょっと電話。 「弁天山美家古寿司」は、昔から一度行きたいと思ってるのだが、何度か電話するも誰も電話に出ない。忙しい営業時間内の電話では先方も迷惑だろうと、ちょっと時間を外して電話するのだが、それが逆に向こうのポリシーに反してるのだろうか。当主が5代目の老舗ともなると、営業時間外は電話も取らないのかもしれないな。 というわけで、本日予約したのは、人形町、大正13年創業の江戸前寿司の老舗、「喜寿司」。この「喜」は、看板の正字では、漢字の「七」が三つ重なった字である。ここも有名な店で、あちこちの本にも掲載されている。日比谷線、人形町の駅から徒歩で2分の、年季の入った2階建ての日本家屋。落ちついた門構えで、中に入ると実に天井が高い。 座ったのは年季の入ったカウンタ中央。雑誌などでも見たことあるご主人の油井氏は、入り口近くのカウンタに陣取る。菊正宗冷酒を飲みつつ、とりあえずツマミを見計らいで目の前の職人に頼む。まず刺身の盛り合わせ。北海道、噴火湾220キロのマグロ赤身。千葉、大原のヒラメ。赤貝と盛り合わせて。マグロはコク深く、赤身の渋みと旨みが十分。ヒラメも上質。 次にはアナゴ白蒸し。羽田沖とのこと。塩でと頼むと、萩の天然塩を添えて。このアナゴは、実にフックラと柔らかく蒸し上がっている。深いコクと滋味があり、素晴らしい。目の前の職人も、自信があるらしく、「梅雨時もいいですが、今頃も最高です」と笑う。 ヒラメの皮焼きポン酢の小鉢に続いてサバ。塩も酢も、実に軽い。「〆方は軽いでしょう?」と職人。身が実に新鮮で、上質かつ軽やかな脂を含んでいるので、あえて軽く〆ているのが技である。これまた秀逸。2本目の酒がまだ残ってるのを見て、シロイカのゲソ炙りを出してくれる。 結構酒が回った。ここの冷酒の容器は1.5合入るのだそうだ。「先日、4本飲んで、我々が店を片付け終わるまで、カウンタに突っ伏して寝ておられたお客さんがいましたよ。ま、6合ですからね」と、主人が快活に笑う。 主人も、目の前の職人も、実に目配り、気配りともによく、客との会話もポイントを外さない。常連にも一見にも、あんまり態度が変わらず気配りするところが、実にエライ。寿司屋ではこれが出来ないところが多いんだよなあ。そして、実にキビキビした仕事ぶり。 このへんでお茶に切り替えて、握りに移行。「握りは1貫づつでもお出しできます」とのことなので、とりあえず8貫くらいを見計らいで所望。 まず、皮を湯引きにしたタイ。スジ引きのトロ。丹念にスジのところを外してから寿司種にするらしいが、これも絶品。大原産のアワビは、なかなか立派だが、生だったのがちょっと残念。コハダは1枚づけ。かなりしっかり〆てあり、美味い。 シャリの具合は、やや柔らかいが、スッキリとして、なかなか結構。クルマエビ。スミイカと続く。スミイカは1杯で2貫取れるくらいまで大きくなってきた。ちょうど季節で生があるというイクラ。これは塩気も強くなく、皮がまさに溶けるようで美味い。そして、煮たシロイカ。あっさりしたツメを塗って。ツマミで出してないものだけを選択してくるのも、当たり前だが気配りあり。最後にカンピョウ巻を所望。新富、鶴八系と同様、醤油のいらないシッカリしたクラッシックな味付け。美味し。 1時間半の滞在で、酒も寿司も堪能。ま、しかし、勘定は2万4千円。確かに最上級の素材を使った寿司であり、美味いし居心地もよいのだが、値段も張るなあ。まあ、だからといって寿司そのものの評価が下がるわけではないのだが。酒とツマミを控えれば、もっと安く上がるだろう。 |