MADE IN JAPAN! 過去ログ

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2002/12/23 西大島「與兵衛」 

昨日の夜は、西大島、「與兵衛」。土壇場で予約に変更があったので謝ったが、たまたま他の予約が入ったので大丈夫でしたと親方。なんにしても申し訳ないことをした。隣に座ったご夫妻の旦那のほうは日本語ペラペラのフランス人。フランスというよりアルジェリア風の風貌であるが、この店のお客も珍しい人が多い。

親方は、ひょっとして堀内さんはインターネットで自分のページ持ってますかと聞く。どうも自分の店の名前を検索して、このページにたどり着いたらしい。親方の年代でネット接続するなんてエライもんですな。「あら輝」でGoogle検索しても、やたらにこの日記の過去ログがヒットするのだが、「與兵衛」で検索しても出てくる。

酒は静岡の「開運」を冷やで。ここに入れてる酒屋は、「十四代」を流行らせたとのことだが、いつも数種類気の効いた酒が置いてある。外は寒かったでしょうからと、まず暖かいシマアジのアラ煮。この出汁も実に上品で美味し。そして、いつもの付きだしの一皿。煮ホタテ、牡蠣の煮びたし、エビの頭、イカの耳、北寄貝など、すべて火を通し、漬込んだり、柚子を散らしたりして味がついている。牡蠣は風味よく出汁も効いて大変に結構。

ツマミをもう少しと所望すると、アナゴをツユで温めて。冷蔵庫から出した大きな容器から鍋にちょっとだけ入れたツユは、もう20年以上も継ぎ足してるのだとか。鶴八系ならもっと醤油の効いた色だが、ここのアナゴを煮るツユは、ちょうど関西のうどんダシ程度の淡い色。しかし、実に上品な旨みが十分で、ここの火を通したネタというのは、おそらくこのアナゴのツユがベースになって、味を煮含めているのではないかと推察される。煮汁で温められたアナゴは、脂もあり実にふくよかで美味し。年中ある種とはいえ本来の旬は夏のはず。親方によると、3キロからほんの数匹しか取れない東京湾ものの最上品を、昔、「きよ田」に入れてた仲卸から引いてるのだとか。今日のはその中でも最高だという。確かに素晴らしい。

仲卸にも気難しい親父が多く、気心がしれないと最上の品は売ってくれない。この店を開けた時も、「西大島でやってる與兵衛」と言うと、「知らないねえ」と鼻であしらわれたとか。そういう中から段々と信頼関係を築いて行かないと、築地でも本当によいものは引けないのだとは親方の弁。こういう職人の固まりのような話をしながら、50代のこの親方は、ドイツで働いた経験もあり、仲間とビートルズのバンドもやってるのだから、なかなか面白いもんである。ヒラメの甘酢漬エンガワ部分も、中トロヅケの炙りも実に結構。

まだ酒は残ってたが、このへんで握りに移行。すべておまかせで1貫づつ。マグロ赤身ヅケ、ヒラメ甘酢ヅケ、ヒラメ胡麻たれヅケ、皮目を炙ったシマアジ、煮イカ、北寄貝酢ヅケ、エビなど、どれも美味い。コハダの酢は、鶴八系よりやや軽めであるが、これはこれで実に上品に仕上がっている。シャリの具合は、やや固めで、これが実に結構。ハマグリ、アナゴときて、最後に卵焼きをツマミで食べて〆。

勘定をして店を出る時、おかみさんが、「来年もよろしく」と海苔の詰め合わせを。そういえば、ここに来るのは、今年はおそらく今日で最後。次回の来訪は、もう2003年。いよいよ年の瀬。外に出ると、また一段と寒さが厳しい。