MADE IN JAPAN! 過去ログ

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2003/02/12 ここは浅草、「弁天山美家古寿司」。

休日の昨日は、夕刻から浅草あたりをブラブラ。仲見世にある浅草寺縁起を書いた看板など興味深く眺める。近くに住んでた頃は、逆にこういう物には目が行かなかったが。5時過ぎに、「弁天山美家古寿司」へ。

店の前では、ジャージ着た怪しいオッサンが腰を屈めて店内の様子を伺っている。しかし、店に入る気配なし。待っててもしかたないので、ドアに手をかけると、オッサンは、「この店は、TVにもよく出て、有名なんだってね。」と言い残し、そそくさと立ち去る。浅草界隈には、こういう怪しげなオッサンが多い。異物を排斥する小奇麗な新興住宅地にはない、清濁併せ呑む古くからの盛り場の度量というか。ははは。

すでにテーブル席にもお客が3組。カウンタ右隣の席では、暗い表情のやたら太った男が、実に陰気にお茶を飲み、握りを食っている。左側には老夫婦。この2名も一切言葉を発せず、黙々と寿司を食べている。なんだか気が滅入るな。

「お茶でよろしいですか」と聞かれたが、よろしくない。大関「山田錦純米」を注文。ツマミをおまかせで。まずシャコとタコ。シャコはなかなか肉厚で美味い。タコは頭の部分。2品目は、貝と白身のミドリ酢和え。ミドリ酢とは、甘酢にキュウリをスリおろしたものだが、フレッシュな風味がなかなか結構。3品目は、マグロと平貝のぬた。酢味噌にカラシを混ぜ込んで食すのが美味い。

この店では、別に何も言われないのだが、早く酒を飲み終えて寿司を食えと無言で急かされているような気がする。早々にお酒を切り上げ、握りを10貫程度おまかせで。寿司種の切付けは、かなり分厚いが、白身はやや旨みに乏しいか。古式の江戸前仕事を色濃く残す寿司であるが、素材もすべて超一流とはゆかないようだ。もっとも、煮たり酢につけたり加工した種が主流だから、生の素材の新鮮さだけでは語れない仕事である。築地はお休みの祝日だから、条件も悪いのは事実。タイ、ヒラメ昆布〆、コハダ、煮イカ、赤貝、平貝、ヅケ、ブリ、アナゴ、玉子など一通り食す。

ブリは2月一杯までだとか。コハダはしっかりした〆具合が実に結構。美味い。アナゴは軽く炙ってから握るが、ふっくらあっさり仕上がっている。煮イカもそうだが、ツメが美味い。マグロの質は、素晴らしいとは言いかねるが、ヅケはコクがあり結構。握りは大きめだが、種と一緒に噛み締める酢飯が実に美味い。やや固めだが、これが江戸前の標準的具合というか。

勘定は、たいへんリーズナブル。ツマミは1品1500円、握りは1貫500円の見当。ただ、ここで出されるおしぼりは、市販品の「紙製」なんで、これがちょっとなあ。まあ、私は「寿司は箸で」派なので気にならないが、手で食べる人には紙おしぼりはねえ。そうそう、親方が妙に疲れたような雰囲気なのは、ちょっと気になった。