夜は上野毛、「あら輝」巡回。席にはすべて名前が入ったナフキンが置かれ、本日の客はみんな常連ばかりとのこと。ここは夜1回転しかしないし、すべて店にまかせきりのスタイルなので実に落ちつく。 お酒はまず岐阜の大吟醸「大輪」。キレのよいお酒。名古屋から1年の約束で預かっているという若いお弟子さんが、親方の指導を得ながらツマミを切ってくれる。もう他店で4年ばかり修行しているとのこと。包丁使いもなかなかサマになっている。 刺身のツマにシロウリ千切り。本日は夏の種が揃ってますと親方。白身はイサキ。湯引きした皮目に旨味あり。腹にあった白子を蒸したものを挟んで。この白子が実に濃厚で美味い。カツオは「きよ田」の親父から、客の面前で血合いを外して切りたてのキレイな断面を見せろと教わったとのこと。プレゼンの技法であった。肝心の身のほうは脂の乗りが薄く、爽やかではあるが味も薄い。今年のカツオはあまりよくないと親方と話す。 アワビ塩蒸し、アジ、マコカレイなど。アジは愛媛から。脂が乗っているが雑味がなく実に素晴らしい。イカは白イカ。身とゲソの塩焼き。あっさりした甘味があって美味い。夏のアオリは夜1回転のこの店では種が回転しきれないかもしれない。小粒のウニは、ねっとりと旨味があり、そのまま食べて美味い。ブランドは橘印。そういえば、これは、築地の「つかさ」の親方が一番好きだと言ってたブランドでもあった。カボチャの新香も爽やかな夏の香り。 お客はみんなこの店に慣れた常連ばかり。先日、店の特集が掲載された外国人用の英語雑誌を回覧したり、これを見て日本語まったくダメなギリシャ人と英国人2名が来訪した際の珍談などをなごやかに聞きながら酒が進む。 親方が、「菊姫超吟醸、菊理媛」などという瓶を出してきた。「くくりひめ」と読むこの酒の名は、白山山系に住む森羅万象の運行をつかさどる日本古代の女神の名前。平成4年醸造の10年古酒。酒屋から押し付けられたのかもしれない。今週開けて4合ばかり残ってるのを、「封を開けてるし来週までは持たないので、皆さんにふるまいますよ」と片口に次いで配ってくれる。値段をつけるなら1杯5000円というので、「まあ、ちょっとづつみんなの勘定に乗せといてよ」と笑い話に。ありがたかったが、すでにかなり酒が入っていたのであんまり差が分からなかったのが残念。ははは。 この辺で握りに移行。マグロは紀伊勝浦とのこと。シャリは相変わらずツヤツヤと美味い。脂の具合を変えて5貫ばかり。大トロ部分はシャリとの相性が結構。来週ちょっと休みを取るので、仕入れた大きな固まりを消化しないといけないらしい。琵琶湖の鮎。実に淡い味だが爽やかな香り。そろそろ與兵衛でも鮎が出る頃だ。車エビ、アサリなどと続くが、お酒がかなり入り、となりのカップルとあれこれ寿司談義してたので、最後のほうはやや記憶があいまい。ははは。しかし酒も寿司も堪能して店を出る。 |