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2003/09/14 久々に中野坂上「さわ田」

昨日の夜は、中野坂上「さわ田」訪問。前回が6月8日だから、実に久々。夏の寿司種と新子の季節とをほとんどすっ飛ばしてしまったことになる。しかし、超人気店で、なかなか予約が取れないのだよなあ。改善策は検討しているようなのだが。

5席のカウンタに座ると、目の前がなんだか明るい。昔は黒い樹脂のつけ台だったが、白木の一枚板に変わっている。店の角にはこれまた白木作りの特注氷蔵庫。エアコンも新調。そういえば、椅子も赤いビロードに変わってるようだが、これはどこかで見たような。聞いてみると、昔「きよ田」の内装をやった大工に頼んで7月に改装したとのこと。なるほど「あら輝」の紹介か。6席使うのは貸切の時だけで、普段は相変わらず5席の営業。

氷蔵庫は寿司種が乾かないのと同時に熟成にも効果があって、白身などは入れておくと実に見事な飴色になるとのこと。こういう小さな人気店でないと逆に使いこなせないかもしれないが、寿司種の温度管理面で冷やし過ぎないのがよい。

「常温でしたね」と「麒麟山」が出てくる。なかなかよく覚えているものである。冷酒には「磯自慢」があるらしい。時刻通りに5名揃ったので同じペースでまずツマミ。

つきだしは柚子風味のイクラ。皮が柔らかく口中で溶ける。白身はヒラメとタイ。ヒラメは上質だが、香り旨みともややまだ薄いか。九州のタイは香りと旨みがよい。トリ貝は取り出すだけで身が縮むほど新鮮。上品な甘味だがそろそろシーズンは終わり。アワビは大きな固まりをいつものごとくゴロンと。ミル貝は炭で炙って七味をかけて。ミル貝は炙ると旨みとコクが増す。

唐津のウニは西日本のウニ独特の薄い箱に入っている。これが1枚まるごとポンと出てくる。くどい脂はないが旨みと甘味だけが凝縮している。三陸のサバは炭で焼き霜に。シャコは実に立派な身を軽く炭で炙って。スミイカゲソも煮切りを塗って炭火で軽く炙って供するが、どれも結構。秋口に入ってくると炭火で炙るというこの店の得意技が生きる場面が多くなってくる。

カツオは藁スモークの具合が実によい。本マグロトロは固まりを串に刺し、煮切りを塗って炭火で焼く。切り分けるとルビーのようなレアな焼きあがりが食欲をそそる。「まるでお肉みた〜い」と客の女性が感嘆して、「牛肉は人間が作った脂、これは海が作った天然の脂なんですよ」と返されるのもいつものお約束。カマスは小さな棒寿司仕立てにしてこれまた皮目を軽く炙る。香りがよい。

ツマミが大量なのでだんだんお腹が一杯になってくるが、このへんで握りに移行。1貫づつおまかせで。流線型の握りは小さめ。酢飯はスッキリした後味のよいもの。まずスミイカから。コハダはオボロをかませて。タイ昆布〆。大間だというマグロは赤身と中トロ。赤貝は爽やかな風味。小柱は軍艦巻き。カツオは酢飯と一緒だとまたスモークの風味が違って感じられる。握る寸前に茹でるクルマエビは尾の部分にはさむエビのペーストがアクセント。ヒモキュウ巻も美味い。赤貝のヒモとキュウリが合うことを見つけた奴は偉いもんだな。アナゴは炭で軽く炙って。玉子の後で最後に中トロの細巻。マグロの酸味が実に爽やか。

訪問のたびに寿司種のラインアップが季節に応じて変化し、そして新しい工夫がある。同じ場所に安住せず走りつづけている姿勢が素晴らしい。連日の満員で忙しいだろうが、仕事が一番おもしろい時期でもあるだろう。「5席の寿司屋の究極を目指してまだまだやります」と意欲を語っていた。できたらもうちょっと東に店を移してもらうと通うのが楽なんだが。

余談だが、「悪口雑言集」の友里氏が日刊ゲンダイに、「親父が勘違いして種の質を落とさないうちに行ったほうが得策」と書いてあったのにはだいぶ立腹で、「何言ってやがる」という評価である。そう書かれて逆に気合が入ってるらしい。ツマミの数が増えてるのもその影響か。はは。

「本当は、うちの店なんかに来てないんじゃないすか」とのことであったが、ま、確かに来なくても書けるようなことしか書いてなかった。何が出たか詳しく書くと、いつ来たかバレるので書いてないという線もあるし、あんまり寿司種のことは興味無いのかもしれない。

しかし、この友里という人も気の毒と言えば気の毒。「さわ田」など、割とよいことが書いてあるほうだと思うが、生来の性格の悪さが露呈した書きっぷりでは、どこの店でも嫌われるだろう。外野の人気はあっても、「あれ書いたのはオレ」と明かすことはどの店でもできない。だとするとご本人の好きな「特別料理」とやらはどこに行っても食べさせてもらえないことになるのだが、またそれが怨嗟を呼んで悪口雑言を書き続けることになるのだろうか。ま、他人が機嫌よくやってるのだから文句つける筋合いにないが、なんだか可哀想な人だとも思うのである。大きなお世話か。