昨日の夜は、本年最初の、中野坂上「さわ田」。予約したのは去年の11月だったが、土曜となると昨日まで取れなかったわけで大変な人気である。ニュースでは雪とのことだったが、まだちらつく程度。大したことあるまいと傘も持たずに。 以前は6時半スタートだった気がするが、本日は6時の指定。いつからか変わったようだ。1〜2分過ぎて入店するとすでに残りの4席は到着済み。 本年もよろしくと親方と挨拶をかわしてスタート。お酒は麒麟山を常温で。つきだしはイクラ。ワサビは相変わらず実に立派なもの。ツマミはまず白身から。白木の氷蔵庫から出されたヒラメ、タイとも程よい熟成で上品な旨み。タイ皮も炭火で炙って香ばしい。エゾあわび。ミル貝は炭火で炙って。富山のサバは酢〆のままと焼き霜と両方。脂は案外あっさりしているが旨みが実に強い。平貝も炭火で炙り、七味を振って。ミル貝も平貝も、軽く触れるだけで見たことがないほど収縮するのにはいつも驚かされる。 シャコは煮びたし。田舎味噌はお好みならキュウリを添えて。カツオは藁の風味がよい。走りの白魚は塩でも醤油でも。煮切りを塗った大トロの炭火炙りも脂が口中で溶ける。カマスの棒寿司は炭火で酢〆のカマスの表面を焼き霜に。香ばしく溶けた脂が酢と渾然一体となって口中に。 このへんで握りに。1貫づつ煮切りを塗って白木のつけ台に置かれる。スミイカ、ヒラメ昆布〆。マグロは赤身、中トロ、大トロと連続で。どれも実に結構。カツオ、茹でたての海老、子柱は軍艦巻。赤貝も実に立派な身で爽やかな香り。肉厚のコハダは酢の枯れた熟成具合で美味い。ハマグリはおおぶりな身。アナゴは炭火で軽く炙るが、これも結構。玉子は山芋の味が昔に比べてシットリと落ちついてきた。赤貝ひも巻で一通り終了。前回も感じたが、酢飯の具合は以前よりやや味が濃くなっているような。しかしどれも濃厚なここの寿司種にはこれで合っているように感じる。 小さめの白木の種箱がいくつかあり、1枚板のフタに丸みがついているのがこれまた「あら輝」風。同じ棟梁が作ってくれてるのだそうである。当日供する種は大きな氷蔵庫とこの種箱に保管され、寿司種を供するための温度管理がかなり厳格になっている。例えば、握りにするマグロについて、数分前に1貫分づつ切り付けてザルに並べて置く。室温に近くなると香りが立ってくるとか。「しみづ」などでも観察していると先の段取りを考えて種の温度を調整する時間を取っているのが分かるが、15貫分もザルに並べてしばらく放置するというのもあんまり見ないやり方ではある。 毎回毎回新しい工夫があるのは、あえて悪く考えれば確固たる伝統の技を修行してないからの思考錯誤とも言えるが、よりよい寿司をあくまでも追求する研究熱心と進取の気性には素直に感心する。まあ、自分の店で自分の商売。外野が何と言おうと自分の好きなようにやればそれでよいわけで。余談だが、昨年の3月、最初に訪問した時に、「しみづ」と「あら輝」を折衷したようと書いた。最近内装も含めて、どちらかというと「あら輝」色がより強く出てきている気がする。 昨夜はご夫妻と思しい2組と同席したが、みんな静かで誰もほとんどしゃべらない。実に静かな前半戦。しかし、お酒も回る後半では、佐川急便時代のエピソードやら先日あったというTV取材の話で店内もなごやかなムード。なんだかんだで9時近くまで。店を出ると雪はやはりまだチラつく程度。やはり積もるような雪ではなかった。 |