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2004/05/16 「與兵衛」 

夜は西大島「與兵衛」。最初のお酒は岐阜の大吟醸を。名前失念。実に軽い口当たり。まずいつも通りのつきだし。エビ頭、シャコ、ミル貝ヒモ、イカのヅケ、ホタテ煮びたし、マコカレイ肝煮つけなど。肝は旨みは濃厚だがしつこくない脂。マグロ血合い部分のコーヒー煮。これはいつ食べてもマグロの血の香りとコーヒーの香りが溶け合って独特のコクとなっていて美味い。いつもある訳ではないのだが、一度食べると忘れられない味。

「十四代」、「開運」とお酒を切り替え。中トロのヅケ炙り、カレイの縁側甘酢、アジ酢〆の炙りをツマミで。酢〆を炙る光り物はいつもはイワシだが、アジでも脂は軽いながら結構。このへんで握りに移行。口中を洗う熱いお茶が気持よい。

マグロヅケ、甘酢づけのエビ、皮目を軽く炙ったキス、酢〆のニシン、同じく酢〆のイワシ、沢煮のアナゴなど、実に美味い。コハダは難しい時期になったのでアジに切り替えてお休みだとか。ニシンはイワシ大。しっかりとした酢〆にして握るのだが、ちょうどアジとイワシの中間のような甘い脂が舌の上でとろける。

ニシンを使うのは長い寿司屋生活でも、今シーズンが初めてとのこと。もちろん古式の江戸前にはない種。しかし、どうしても病的に昔の江戸前の種だけにこだわるのであれば、マグロにしても変質を避けるため井戸水につけておいた腐りかけの醤油ヅケしか食ってはいけないことになってしまう。流通が発達した現代の恩恵は、それはそれで享受したいものではある。

握りが一段落した時に、「第三春美にも行かれたんですね?」と親方が笑う。うちのページのことはずっと前からご存知なのだが、たまにはネットでページをチェックしてるとのこと。ビートルズ好きでバンドまでやってるのだから、あれこれ進取の気性あるのが偉いな。

最後に玉子。これまた美味い。実に満ち足りた気分でお勘定。よい寿司屋を後にする気分は、ちょうど面白い本を読み終えたり、見ごたえのある映画を見た後とよく似ている。それは「求道」ではなく、楽しむべき上質のエンターテインメントなのだ。最近、とみにそういう気がしてきた。

帰り際に、寿司飯のお焦げ部分で作ったおむすびをお土産にと貰った。帰宅してひとつ食ってみると、握りの酢飯同様、米粒ひとつひとつの食感が分かるくらい固めの飯。やはりご飯はこれくらい固めに炊くのが美味い。いや、まあ、好き好きではあるのだが。