金曜の夕方、西大島「與兵衛」に予約の電話。奥さんが出て、「土曜日はもう一杯なんですよ〜。でも今晩は空いてるので如何ですか?」とのこと。そう言われては行かざるべからず。仕事帰りに西大島まで。 カウンタには2名の老紳士が先客で。お酒はまず「はせがわ酒店」セレクトの「今週の大吟醸」(名前失念)から。さらりと軽い飲み口で料理にさわらない美味い酒。種札を見ると、サヨリ、そして牡蠣の煮浸しが新たにラインアップに。キスもまだまだ上質なのだが、イワシ、サバ、コハダ、サヨリとすでに4種類光り物があるので仕込みが間に合わないとか。 牡蠣の煮浸し、エビ頭、シャコ、ヤリイカゲソの醤油ヅケ、煮ホタテ、アナゴ肝など、いつものお通しの一皿で日本酒を。久々の牡蠣煮びたしは立派な牡蠣で実に美味い。シャコも大ぶりで実にシットリした旨み。「先日、河岸で「つかさ」と書いてあるトロ箱持ってる人を見かけたんだけど、あれが築地の寿司屋の人ですかねえ」などと親方が聞いてくる。先日ここでたまたま同席したIさんとも「つかさ」の話をしたし、ちょっと興味があるのかな。親方の外見を伝えると、「う〜ん、そうかもしれない」とのこと。ま、しかし虎ノ門や銀座にも「つかさ」という同名の寿司屋があるからなあ。 お酒を十四代に切り替えて、第2のツマミ皿。中トロヅケはいつもながら美味し。イワシは酢で〆た後で皮目をバーナーで焼霜に。これが素晴らしい。ヒラメのゴマ醤油づけ、縁側の甘酢づけも生では味わえない旨みを凝縮した種。お酒が進む。親方が語る築地での仕入の話など拝聴してると、語りかけてきた隣の老紳士は年季の入った寿司好き。この店に来るのは今夜が初めてだが、神保町鶴八は先代の頃からの古い常連。新橋鶴八、すきやばし次郎、よこはま次郎などもよく行くとか。久兵衛の話にも実に詳しい。斯界の先達に貴重な話を伺えてなかなか面白かった。 お茶に切り替えて握り。いつもながらここのお茶がまた美味い。マグロ赤身のヅケは血の香りと濃い旨みが素晴らしい。ヒラメの甘酢ヅケ。皮目を炙ったシマアジは香りよし。イカは軽いヅケにして。オボロをかませた巻エビは酢飯に実によく合う。北寄貝も甘酢をくぐらせてると思うのだが他の店ではお目にかかったことのない深い旨みを残した仕事。 サヨリ、コハダ、イワシ、サバの光り物を連発で。サヨリは塩と酢がかなり効いた、どちらかというと古式を残す仕事だが、サヨリの脂の甘味を引き出して実に美味い。握りのイワシは炙らないが、固めの酢飯一粒一粒にネットリとした脂がからみつくかのよう。サバも美味い。ハマグリ、アナゴと煮物。アナゴは白い沢煮で炙らないが、ネットリとした身が口中で溶ける。ここのアナゴも一度食べると忘れられない仕事。ツメにも特徴があり実に美味いのであった。最後に小柱をすり入れた玉子を。神保町鶴八の親方に小柱入れることを教えてもらった話など聞きつつフィニッシュ。久々に與兵衛の寿司を堪能。 |