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会社帰りに電話入れて「新橋鶴八」。 お通しはホタルイカ。お酒は菊正の冷や。最初に平貝炙りが出てくる。ヒラメ。まだ大きく分厚い身で脂も抜けていない。カツオはショウガ醤油で。香りがよい。塩蒸し、アジ、ハマグリとツマミをもらう。 握りに移行して、中トロ、コハダ、アナゴ、カンピョウ巻。どれも美味い。今日はどこそこの何がある、今日はあそこの何が置いてあるという店ではない。寿司種がどこの産地かなどと聞いたことはない。勿論、聞けば教えてくれることは知っているが、あんまりそういう気にならない。それは、いつも同じキチンとした質の種が当たり前のように置いてあるから。つい見過ごしてしまうが、これはかなり凄いことである。 もっとも、マグロについては、親方本人が「鮨を極める」で「マグロを売り物にする店になりたくない」と語っている。別に悪い物を置いてある訳ではないが、超高級という訳ではない。ヅケも積極的には売り物にする風なし。ウニ、イクラも置いてあるものの、どちらかというと頼む客がいるからというだけのこと。この店で頼むべきは、〆た種、煮た種である。コハダ、サバ、塩蒸し、アナゴ、ハマグリなど。もっとも特段、いきなりお茶で握りにしなければいけないプレッシャーを感じるような「寿司求道店」ではない。むしろ飲む客のほうが多いだろう。 親方はちょっとぶっきらぼうに見えるが、客席への目配りよく、本質はシャイで真面目な性格。客のほうからいきなり傍若無人にふるまうと保証の限りではないが、きちんと振舞えば、黙っていても向こうで気を使ってきちんとしてくれる。そういう職人の店。慣れるとたいへんに居心地よいのである。 |