昨日夜は、会社帰りに「笹田」へ。場所は西新橋1丁目尾坪ビル。 新橋「京味」で修行したご主人の笹田秀信さんが今年6月に開店して、奥さんと2人で営む小さなカウンタ和食の店。 カウンタ8席のみ。お昼の営業は無し。日曜祝日定休。夜は基本的に1回転とのこと。先週から「しみづ」が遅い夏休み。清水親方から、「寿司ではないですが、お暇でしたら、この店にも是非どうぞ」と名刺をもらっていた。市場でもよく会うのだが頑張っている店とのこと。先週2名で予約しようとするも満員。今週1名で再挑戦して初訪問。 この場所は、以前「おつぼ」という寿司屋があった時一度だけ訪問したことがある。引き戸を開けるとすぐに椅子があってカウンタという実に狭い場所だが、改装して磨き上げられた清潔な店内。あれ? カウンタ端に見覚えのある男性が1名。「しみづ」でいつもお会いする「最多来店記録」氏であった。同じく「しみづ」で名刺貰って流れてきたクチ。奇遇ですねとご挨拶(ま、奇遇でないといえば奇遇でないか) 先週から数えてもう4回目の訪問だとか。昨日は「しみづ」の親方も来てたとか、あれこれ雑談をしながら。 ご主人はまだ若く、真面目で仕事熱心な印象。関西アクセントを尋ねると、奈良のご出身だそうである。最初に生ビールをもらい、料理はおまかせで。 前菜は、カマス酢〆、枝豆、イクラの3点盛り。茄子の煮浸しは、辛味大根と糸削りのかつおぶしをかけて。しみじみ美味し。お酒に切替えて、「黒龍 本醸造」を冷酒で。他にも天狗舞、吟醸では開運、上喜元などあり。 松茸とシメジは軽く炙る。松茸は酢橘と醤油、シメジは塩と酢橘で。かみ締めるとシメジの旨みがにじみ出て来る。里芋の素揚げは滋味深い甘み。こういう野菜関係は、寿司屋では味わえない美味さ。 お造りは、マグロ赤身、中トロ、ヒラメ、縁側、〆サバ、甘エビ、カツオなど少しずつ盛り合わせて。寿司屋を凌駕するかどうかは別としてどれも上質で美味い。人品卑しからぬ初老の紳士が一人でカウンタに来訪し、「XXはあれから来たかい?」などと語りながら飲んでいるところを見ると、開店3ヶ月とはいえ着実にお客が定着してきているところが伺える。 焼き物は、軍鶏の塩焼き、しっかりした肉をかみ締めるとなんとも奥深い旨みが広がる。皮の脂のコクがまた香ばしい。お椀は名残の鱧と松茸。上品な味付けなのだが出汁がスッキリと力強い。鱧の旨みと松茸の香りが素晴らしい。生このわたでお酒フィニッシュ。最後は縦長卵型の土鍋を使って目の前で炊いたばかりのご飯。これが美味いこと。硬めに炊き上がった湯気の立つツヤツヤしたご飯に勝るものなし。日本人に生まれてよかった。死ぬ前に何が食べたいかと聞かれるなら、炊きたてのご飯だな。お新香と赤だしで。 出される料理やタイミングはお客によって少しずつ違う。カウンタだからこそ、あれこれ見計らいながら実現できる、意図を持ったある種の「揺らぎ」が気持ちよいのだ。何をどう出すか、手持ちの素材と相談しながら段取りを考える時間が欲しいので、できたら、ほんの少し前でも結構ですから来店前に電話いただけるとありがたいんですよねとご主人が。「でも、まだ慣れてないもので、何組かお客さんが来られるともうパニックです」とも笑う。最後は白玉を軽く茹で、小豆とあわせたデザート。普段甘いものは食べないが、これは実に控えめで上品な甘み。何を食べても手抜きなくきっちりした味。奥さんは飲食店の経験ないというが一所懸命に頑張っている。ご主人ともども誠実で真摯な仕事振りが伝わってくるよい店。勘定は、飲んで食べた「しみづ」と同程度か。近々また行かなくては。 |