土曜日の夜は「新ばし 笹田」。 この前の月曜発売、週刊ポスト巻末の「原寸大うまいもの図鑑」に、ここの「京野菜ミニおでん」が紹介されていた。「京味」で学んだものでなく、何かオリジナルでと考えて選択したとか。こんな紹介がされていたので一部引用を。実際この通りの一品なのだ。 旬の聖護院大根は舌で潰せるほど柔らかく甘みがこぼれる。京人参はかおり高く、海老芋は大地の滋味を抱え込んでいた。かおりは当然、野菜の甘さにも色々あるのをじみじみと感じる。この記事を読んで、「おでんだけ食べることができますか」と問い合わせあったのだが丁重にお断りしたとか。まあ、おでん屋じゃないからなあ。金曜に、以前オフでお会いして「つかさ」もご一緒したことのある某氏が来訪されたことなど聞く。ネットで見て来訪し、再訪するお客さんも徐々に増えてきているとのこと。結構なことである。 お酒のラインアップを少々変えたとのことでメニューを見て、「九平次 純米吟醸」を。酒の名前で思い出して「與兵衛」に入れてる酒屋さんの話をすると、「ポスト」執筆者から紹介を受けたのは、まさにその「はせがわ酒店」なのだという。 酒にうるさい客というのがいるもので、「あれ」を置けば「これ」がない、「これ」を置けば「あれ」がないとキリがない。しかし、寿司屋と違い和食の店でお酒一種類というのも華がない。奥さんと2人で切り盛りする狭い店では酒の管理にも限界がある。笹田氏はお酒飲まないそうなので、信頼できる酒店に丸投げで品揃えをまかせる「與兵衛」方式が取れればそれがベストなのかもしれない。 まず、薄揚げと青菜をサッと暖かい出汁で炊いた温製おひたし。寒い時には美味いよなあ。蒸し飯とコノワタ。コノワタは新しいものとヒネ物と食べ比べて。蒸した餅米には新物がよいが、ヒネ物は単体で日本酒によく合う。こんなものを塩辛にすると美味であることを発見した昔の人は偉いもんだな。セイコガニは、綺麗に足を外して味噌、内子、外子と共に甲羅に詰める。濃厚な内子と味噌、プチプチした外子が生姜酢に映えて美味い。酢ナマコは柔らかくネットリ。合成物で出したナマコの味や香りというものが想像できない。それくらい微妙なものという気がする。タラ白子。串を打って炙るのが難しいと。 お造りは、タイは腹の身とウニを巻いたものと2種。明石のタイはネットリ旨みがある。ブリも上質な脂がのる。ヤリイカもネットリして。お椀は、焼いてほぐしたタイの身を入れたにゅうめん。これが美味い。養殖鯛の出汁を入れたラーメンというのも聞いたことがあるが、上質な和風の出汁に天然タイの旨みがからんだにゅうめんには敵わないだろう。もっともラーメンのように大量に出されると飽きるとは思うが。 焼き物は、奥久慈軍鶏の味噌漬け。塩焼きもパリパリした皮の香ばしさがよいのだが、味噌漬けも歯ごたえあるしっかりした身の滋味が引き立ち美味い。皮目の脂も旨みあり。煮物は、ムツをサッと水炊き風にネギと炊き、ポン酢で。赤ムツというのは、前に焼き物でももらったが、北陸で称する「ノドグロ」。上品で旨みのある脂がポン酢で食すと実に美味い。身の旨みと脂が溶け込んだ昆布出汁も全て飲み干してしまった。カラスミを貰ってお酒終り。 お茶をもらって土鍋で炊きたての御飯。赤だしと漬物と共に。2杯目は香ばしいオコゲを入れてもらう。ツヤツヤと粒の立った炊き上がりが実によい。炊き立ての御飯には、あれがよいこれがよいというような優劣を超越した美味さがある。お茶が焙じ茶から煎茶に差し替えられて、最後は暖かいぜんざい。夏場の冷製ぜんざいには白玉を入れたが、これには餅を軽く煮て。ご主人の好きな銘柄だそうで、米の旨みが感じられる餅である。どれも美味かった。 帰り際に、年末年始の営業案内を貰う。店のカードの裏に奥さんが丹念に小さな字で手書きしたもので、微笑ましい。年末は28日まで通常営業。年始はなんと3日から営業。ただし、9日までは普通のスタイルではなく、事前予約受けたお客のみにスッポン鍋を主体にした特別コースを供するとのこと。「3日から営業したらと勧めておいたんですよ」と先日金曜の「しみづ」で親方に聞いたが、やはり実際にやるようだ。今年は年始休みが短いのだが予約してみるか。頑張ってもらいたいものである。 |