昨日は涼しかったのに、今日はまた蒸し暑い。こんな日に限って外に出る予定あり。午後から東京証券取引所にファイリングのため外出。いやはや、暑かったなあ。 ということで、ちっとも進まない金沢編だが、3日目をアップ。 (7/21 日曜日 つる幸) 冷房が涼し過ぎて早く目が覚めた。ホテルの和食レストランで朝食。ビルの中に庭園がしつらえてあるし、金沢駅は見下ろせるし、なかなか結構な場所だ。隣の席には、50からみの熟年不倫カップル風。ハゲのオッサンは、朝からビール飲んでいる。こっちは1人だが、マネっこしてビールを注文。朝酒も、たまにはヨイですなあ。ははは。 午前中は、加賀百万石博なんぞを見物。前田利家を描いた該当のNHK大河ドラマは、実は1度も見たことなし。しかし、キャストや、何をやってるかはなんとなく分かった。金沢城内に再建された50間長屋は、すべて白木作りで、靴を脱いで長い廊下を素足で歩くのが気持ちいい。そういえば、最近、裸足で板の間を歩いたりしないものなあ。 夜は、香林坊にもほど近い、日本料理「つる幸」。この店を気に入って、作家の山口瞳がよく訪れたことは、いろんな著作に出ている。その先代は、ビルのカウンタ割烹から始めて、自らの包丁1本で、現在の堂々たる一軒屋の料亭を築き上げ、今は2代目が包丁を握っているのだとか。 日本酒は、菊姫大吟醸。口開けの寒天の後に出た前菜は、バイ貝、シャケ、イカソーメンルイベ風、からすみ、煮凝り、一口押し寿司などが、大ぶりのハスの葉に敷かれた氷上に満艦飾で乗っている。涼やかで、そして豪華。すべて、実に丁寧な味付けで美味。素晴らしい。 マツタケとフカヒレ、カニシューマイが入った汁。和食には珍しく、スパイシーな香りだが、塩加減も美味い。加賀蒔絵の器が美しい。 刺身は、イセエビ、マグロ中トロ、ヒラメ。 美味い寿司や刺身というものは、実はタネの温度管理が重要なのだが、この刺身は、素材もさることながら、温度のコントロールが素晴らしい。冷たければよい、というものではない。板場とサービスの連携がよくないと、こうは行かないだろう。仲居さんは、イセエビの殻に乗った加賀名物の金箔を、醤油に溶くときれいだと勧める。味には関係ないが、たまにはこういう遊びも楽しい。 ウニと白身魚をご飯の上に置いたセイロ蒸し、鮎塩焼きと続く。ここ数日、台風の影響で川が増水し、天然物は取れなかったのだが、今日になって契約している釣り師から待望の鮎が入荷したのだとか。天然物の鮎は、香りが凄い。塩加減も抜群。 日本酒がどんどん進んでいると、「クチコ」を、女将自ら小さな七輪で炙ってくれる。クチコとは、能登の名産。海鼠の卵巣を丹念に集めて、それを一本一本集めて丁寧に形を整えながら干したものだとか。一匹のナマコからわずかしか採れないものを、これだけの大きさに仕上げるには、いったい何百匹必要だったろうか。贅沢な逸品だが、これがまた美味い。 土用の丑にちなんで、ウナギの柳川。これまた濃厚な旨み十分。ナスの味噌焼田楽エビ添えは、野菜の滋味深い一品。アワビとカニの酢の物は、蒸したアワビが素晴らしい。能登のほうでは、立派なアワビが取れるそうだ。 食事は、稲庭うどん、ニシン佃煮、お新香添え。砕いた氷の上の稲庭うどんは涼しげで、ツルツル入る。フルーツは、黄桃、梨に、まるでプチトマトのように真っ赤なブドウ。このブドウの粒が切ってあるのだが、まるでカミソリで切ったかのような鋭利な切り口。細かいところにも素晴らしい包丁の切れを発見した。 最後は抹茶で〆。料理には、すべて感動。仲居や女将のサービスも素晴らしい。「杉の井」も決して悪くなかったが、「つる幸」のほうが上だ。雇われの職人が包丁握っているのと、オーナー自らが包丁握っているのとの差とでも言おうか。ともあれ、堪能した金沢の一夕。 |
昨日は、更新休んでしまったので、ますます後追いになるのだが、先週末の「金沢シリーズ」の続き。なかなか、リアル・タイムに追いつかないな。はは。 (7/20 土曜日) 千取寿司 のんびり起床して、石川県立美術館まで。炎天下を香林坊から歩いていったら、エライ坂道で汗だくに。しかし、美術館の中は、当然ながら、ひんやりと快適。地元の九谷焼は、さすがにあれこれと展示してある。 備前や信楽の、いかにも土塊からひねり出したような色合いは、いかにも味わい深いと思うが、九谷焼独特の、濃い緑と黄土色の色づけは、個人的にはイマイチ好みではないなあ。もっとも、絵画から焼き物から、彫刻から現代美術まで。こじんまりとではあるが、なかなか見ごたえのある美術館だ。 夜は、「千取寿司」。5月の連休にも来たが、なかなかよかったので再訪。夕方、早目に入って、日本酒は、加賀鳶の吟醸。突出しのイカ塩辛をつつきながら、まずツマミをおまかせで所望。 最初に切ってきた白身は、ナメラとアラ。どちらも地元で取れた天然物。舌の上で跳ねるような軽やかな身に、品のよい夏の脂が乗っている。赤イカの身とゲソ、バイ貝、ヒラメの昆布締め、シマエビと続く。シマエビは、甘エビとはまた違う爽快な甘さ。生なのに、殻の鮮烈な赤さが、実に印象的。続いて、緑の卵をまぶした甘エビも出てくる。煮たタコは塩で。軽く火を通したトリ貝も、実に結構だ。 焼き物では、夏とあって、サザエのつぼ焼きが出る。いったん身をブツ切りにしてから、殻に戻して醤油タレで焼いてあるのだが、巻貝特有の磯臭さはほとんど無く、滋味深い旨み十分。土用の丑の日とあって、ウナギを焼いた小鉢も出たが、これも美味い。 ここまで食べると、ツマミですでに十分であったが、寿司屋であるから、やはり握りを食べないと。ということで、白身でナメラとアラの握りを追加。所望すると、マグロ大トロも炙ってから握ってくれるのには感心。イワシのつみれ汁は、相変わらず秀逸。最後は、山芋入り梅シソ巻で〆。結構、酩酊気味であったが、呼んでもらったタクシーでホテルまで帰還。 |
先週の金曜日から、うちの会社は4連休。ブラっと金沢に遊びに行ったので、先週末の分を、記録のために追記。 (7/19 金曜日) 杉の井 お昼前のJASで小松空港まで。ホテルにチェックインして、街をブラブラ。しかし、ムヤミに蒸し暑い。炎天下を歩くのにめげて、早々に退散。夕刻に、予約しておいた「杉の井」までタクシーで。金沢は小さな街なので、どこでもタクシーで10分足らず。たいへんに便利だ。ここは、犀川のほとりに立つ料亭。水を打った石畳が、両脇の行灯の光りに映える。玄関横は、涌き水が流れる趣向にしつらえてあり、水音も涼やか。 車の音を聞いてか、すでに仲居さんが迎えに出ている。数寄を凝らした普請には風情あり。控えの間で、まず抹茶を一服頂いてから、別室に案内される。こういう段取りは、なんだか緊張するな。はは。 座敷は、「ごり屋」ほど古色蒼然とした感じはなく居心地よし。緑したたる庭は実に綺麗だ。店の前の道は、結構、車が通っていたが、中庭は実に静寂。 手長エビ、ハモ(梅肉添え)、鴨ロース、ジュンサイが皿に盛られた前菜。梅酒がついてくるが、この酸味が爽やかで夏にぴったり。酒は、まず天狗舞。1本飲んでお代わりを頼んだら、切れましたとのことなので、次には、菊姫大吟醸に切り替え。菊姫は、活性炭によるろ過を最小限にしているので、酒らしいヒネ味がそのまま残っている。フルーティーな吟醸香。 マツタケとウニの吸い物。他の具は、蓮のスリ下しだろうか。ここの仲居さんは愛想はよいのだが、料理について尋ねても、あんまり内容を知らないところが、ちょっと頼りない気がする。 お造りは、トロ、ヒラメ、タイラ貝。続いて、シマエビ、トコブシ、タチウオが別皿で。なかなか豪華である。トロは、やや熟成が進んで無く固い気がしたが、ヒラメは結構。夏場のヒラメが結構というのも不可思議だが、なぜか悪くないのであった。 次に金沢野菜の炊き合わせ。ナスが美味い。箸休めのおひたしに出た金時草も、金沢独特のものなのだという。これだけはさすがに仲居も知っていた。ははは。 続いて、鮎の塩焼き。鮎の本場に住んでる人には珍しくもないだろうが、東京に住んでると、そうそう口に入るものでもない。やはり初夏の味ですなあ。アワビの蒸し物、土用の日にちなんだウナギとトリ貝と出て、最後は鮎ご飯で〆。しかし、鮎ご飯は、もう満腹であんまり入らなかったのが残念。なかなか堪能した。 全体に味付けは上品な薄味だが、あえて言うなら、ちょっとボケたような薄さなのが、いささか気になる。お年寄りの客も多いのだろうが、そもそも暑い夏だし、もうちょっと塩味を効かせてもよいような気もしたな。 しかし、風情満点の静かな料亭。金沢というのも、なかなかよいところである。ということで、金沢初日終わり。 |