MADE IN JAPAN! 過去ログ

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2003/02/04 宇宙は遠い / 金沢2日目 「宝生寿し」でカニ三昧。

今日も先週末金沢編の続き。金沢2日目の日曜日。雪は止んでいる。ホテルの部屋に届けられた日経の1面、スペースシャトル事故の記事にびっくり。TVをつけると、誰が撮影したのか、テキサス上空を空中分解したシャトルが火の玉になって墜落してゆく映像。

81年製造の「コロンビア」がまだ使われてたというのには驚いた。エンジニアリング的には、十分過ぎる安全係数を取っているはずだが、それにしても老朽のような。日経の記事では、シャトルが深刻な事故に遭遇するのは250回に1回の確率とあった。しかし、この数字は本当か。成田空港でも、1日の国際線の離着陸件数は300件を超える。飛行機にたとえるなら、全世界で毎日何十件の深刻な航空機事故が起こる事故率で、普通の人間として、とうてい許容しうる範囲ではない。やはり宇宙は危険で、そして遥かに遠いフロンティアだ。

"It was if someone had cut the wire," 「まるで誰かが線をプツっと切ったかのよう(に交信が途絶えた)」、というNASAのコメントには言葉もない。



12時にホテルをチェックアウト。お昼は金沢港の「宝生寿し」。しかし、寿司ではなくカニコースを。やはり北陸の冬ですからな。はは。なかなか立派な構えの店。まずズワイカニの刺身をわさび醤油で。花のようにはじけた身は、淡い風味を残して口中で溶ける。

次は茹でたカニ。ズワイと毛ガニと半々。カニ酢にはあらかじめカニ味噌が入ってるが、酢に独特で濃厚な風味あり。昼間なのだが、我慢できずにちょっとだけ日本酒を。ははは。店の名前がついた純米吟醸。酒蔵は福正宗と同じ石引の福光屋だ。

次は焼きガニ。食べる横で店の人が炭火で焼いてくれる。焼いたミソが香ばしく素晴らしい。火が通ったカニの身は、茹でた身よりも甘さと風味が増す。焼いたミソをつけて食すのが美味い。最後にカニ甲羅に熱燗を入れ、残ったミソを溶かしてカニミソ酒を作ってもらう。黄色い脂が浮くほど濃厚だが、生臭さは無く、口に含むと滋味と至福だけが口中に広がる。次には茹でた香箱カニ。やはり内子とミソが最高。足も自分で身を外して食べると更に美味さが増すようだ。

最後は、ズワイカニしゃぶしゃぶ。さっと潜らせてポン酢で。みるみるうちに出汁が出るのには驚き。茹でたカニはすでに食べてるのであるから、湯通しはほんの一瞬にして、半生の風味を楽しむのがコツのようだ。そして締めくくりにカニ雑炊。やや淡いが、実に上品なダシが出ている。カニをこんなに食べたのは初めてかもしれない。

名物だという「オールスター巻」をお土産に買って店を出る。店に入る時には明るかったのに、外はまた雪。北陸の天候も変わりやすい。金沢駅で「福正宗 山田錦大吟醸」を購入。小松空港から羽田まで。短い滞在だったが、冬の日本海の味覚を実に堪能した。帰宅したのは、日曜の夜9時頃。

そうそう、持ち帰ったオールスター巻だが、酢飯の具合は大変に結構。香りもよい。しかし、具が多すぎる。マグロ、ゲソ、イカ、タラコ、玉子、サバ、イクラ、アナゴ、キュウリ、シソ、ブリ、エビ。満艦飾とはこのことだが、ご飯がもうちょっとあったほうがバランスがよいような。「過ぎたるは及ばざるがごとし」そういう言葉がふと頭に浮かぶ太巻きであった。


2003/02/03 冬の金沢。「千取寿司」

1月はなんだかんだ忙しかった。先週末は、久々にのんびりした週末。冬の日本海に、海の幸を求めて金沢まで。

羽田からの便は定刻の出発。空から見ると日本海側に広がる一面の雲。白山山頂だけがポッカリと雲間から見える。小松空港からバスで金沢まで。空から見ると凪いで見えた海も、地上から見ると、結構波高し。曇天模様だったが、金沢市街に入ると急に雪がちらついてきた。しかし、雪に煙る金沢も風情あり。

ホテルにチェックイン後、雪も降ってるし外出せずグータラ。夕方になって、予約してあった「千取寿司」にタクシーで向かう。カウンタにはまだお客さんは誰もいないのだが、職人は忙しく立ち働いている。奥の座敷で宴会があるのか、急ぎの出前でもやってるのだろうか。

お酒は福正宗、山田錦大吟醸を冷やで。この酒を出している「福光屋」という蔵は、千取がある石引のお隣さんで、自分の店の銘柄代わりに使っていると前回訪問時に聞いた。突き出しのイカ塩辛で最初の一杯。なかなか爽やかな飲み口。寿司食う時には、美味くてもあんまり重たい酒も困るから、これくらいがちょうどいいか。

ツマミをおまかせで所望。左利きの職人は、前にも相手してくれた年季の入ったタイプ。まずは白身を、ヒラメ、アラと切ってくる。ヒラメはあっさりしてるがなかなか美味い。アラはツマミより、むしろ酢飯と一緒に握ったほうが美味いような気がした。次に甘エビ。ねっとりとして甘い。

香箱カニが三杯酢で出てくる。香箱カニは珍重されるズワイのメスで、冬の北陸の名物。福井ではセイコカニとも称する。茹でたカニの足の身と外子を全て丁寧に外し、胴体を開けた上にきれいに並べて乗せてあり、カニ肉と味噌と内子が箸だけで手を汚さずに食べられるという、実に丁寧な仕事。

小さな胴体の殻中には、カニ味噌とオレンジ色の内子がぎっしり。この内子が最高に美味い。淡白で甘い身と、濃厚なミソと、芳醇な内子を、美味い日本酒飲みつつ。これぞ冬の日本海の至福だ。香箱はもう禁漁期だとネットで見たのだが、店の話では、禁漁でない港もまだあると、なんだか不可解な説明。まあ、食えれば文句ないわけであるが。はは。

キス昆布〆の後に、バイ貝が出て、そして寒ブリ。赤味がかった切り身に、ダイコンおろしと一味唐辛子を添えて。しかし脂の乗りはもうひとつという気がした。本当の旬は12月だという。ちょっと遅かったか。ヤリイカにコノワタの塩辛。コノワタの塩辛というのは、感動していくらでも食べられるようないわゆる「美味」ではないが、酒に合う、「オツな」味なんだなあ。

ノドグロの塩焼は、以前、夏に食べた時よりも脂が乗り、かつ上品な風味。ツマミの最後は、ホタテ貝柱の炙り焼き。

お酒も回ったし、このへんで握りに移行。お茶が美味い。トロ炙りは2貫。1貫は塩で、もう1貫は醤油で、なかなか立派なマグロだ。このあとは1貫づつ、ヒラメ、キンパチダイ、イクラ、サバ。最後に玉子。玉子は関西風の出し巻。これはこれで結構。

普段、東京では食べない寿司種を頼んだが、これはこれで楽しいもんだ。最後のイワシつみれ汁は相変わらず秀逸。ただ、寿司種には、前回ほどこれは、という感動がなかった。まあ、ここ数日、ずっと北陸は雪で海が荒れていたらしいから、確かに条件は悪かった。客をもてなす態度は実に気持ちのよい店である。

勘定の時に、私の分厚いジャケットを見て店の女性が「重装備だね」と笑う。「いい街寿司紀行」でシャリ炊いてる写真にも出てた、この店のおかみさんであった。